内容説明
世界を席巻する排外主義的思潮や強権的政治手法といかに向き合うべきか?ナチスによるユダヤ人大量虐殺の問題に取り組んだハンナ・アーレントの著作がヒントになる。トランプ政権下でベストセラーになった『全体主義の起源』、アーレント批判を巻き起こした問題の書『エルサレムのアイヒマン』を読み、疑似宗教的世界観に呑み込まれない思考法を解き明かす。
目次
序章 『全体主義の起源』はなぜ難しいのか?
第1章 ユダヤ人という「内なる異分子」
第2章 「人種思想」は帝国主義から生まれた
第3章 大衆は「世界観」を欲望する
第4章 「凡庸」な悪の正体
終章 「人間」であるために
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年、広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。金沢大学法学類教授。専門は法哲学、政治思想史、ドイツ文学。演劇などを通じて現代思想の紹介にも取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はっせー
123
ハンナ・アーレントさんを理解するために読んだ本。思考することの難しさと重要性についてしれた!ハンナ・アーレントさんの著作に全体主義の起源という本がある。その本は難解だが読んだほうがいい。だが私には難しすぎるので全体主義の起源の解説をしたこの本を読んでみた。噛み砕いて説明してくれているため理解しやすかった。なぜ人はわかりやすい英雄を求めてしまうのか。なぜ思考せずに自分と違う人間を非難してしまうのか。ナチスドイツを通して現代の私達にも警鐘を鳴らす本になっている。もっと思考して成長していきたいと思った!2021/12/25
harass
82
ハンナアーレントの著作「全体主義の起源」「エルサレムのアイヒマン」などを一般向けに講義。NHK番組からの本を加筆再構成したもの。個人的に贔屓にしている学者で安心して読める。複雑で論旨の取りにくい本を、噛み砕いて整理して語っている。ナチズムを生みだすことになる、ドイツの歴史的な経緯が非常によく理解できた。著者が巻末で語る対策もそう簡単なものではなく悩ましい。アーレントの知的誠実さに驚く。まあ、日本のファシズムについて、素人のなんとなくではなく、まともに語れる知識人はいないのかと、考えてしまった。良書。2018/07/15
HANA
74
ハンナ・アーレントの主著『全体主義の起源』と『エルサレムのアイヒマン』を解説しつつ、彼女の哲学に迫っていく一冊。初めにアーレントの生涯に触れつつ、内なる敵としてのユダヤ人問題が扱われる一巻、人種思想が帝国主義から生まれたと喝破した二巻、安心して縋る物語を求める大衆の姿を明らかにした三巻。そして凡庸な悪としてのアイヒマンが論じられている。本書で一番感銘を受けたのは全体主義に対する異なる意見を見る複数性の部分。SNSのエコーチェンバー現象が左右問わず問題となっている現在、自分はこの複数性を忘れずにいたいな。2022/05/18
rico
74
哲学者アーレントの入門書。ナチスのような強圧的全体主義集団の所業は悪の集団による特異な事例、などという物語を、彼女はあっさり否定する。ホロコーストを主導したアイヒマンは、職務に忠実な「凡庸」な男だったこと。熱狂したのは「誰かに何とかしてほしい」と望む大衆であったこと。人は容易に悪になり得る。現実を見ると思い当たる節だらけ。世界が単純でないことに耐え、議論できる「知」が重要と著者は言う。さて一方、私たちはネット空間で心地よい言説の海に浸ってないか。そこに対し自覚的でいるのは、容易ではない。2019/06/18
なかしー
52
kindle unlimited本。うーん難しい・・・再読2021/03/01