内容説明
かつて世界は二つに分断されていた。核戦争の危機も迫っていた。そのとき音楽家たちは―。「クラシック後進国」のアメリカから世界を魅了したバーンスタイン、ソ連にあって当局にも屈しないムラヴィンスキー、そして「壁」のあるベルリンに君臨した帝王カラヤン…。冷戦とともに歩み、冷戦の終結とともにこの世を去った音楽家たちの姿から、戦後クラシック界の興亡を描き出す。
目次
序章 「戦後」の始まり―1945年
第1章 鉄のカーテン―1945~49年
第2章 雪どけ―1953~58年
第3章 音楽外交―1958~64年
第4章 停滞の時代―1965~86年
第5章 三人の指揮者の死―1987~90年
著者等紹介
中川右介[ナカガワユウスケ]
1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。出版社アルファベータ代表取締役編集長(~2014年)として、音楽家や文学者の評伝などを編集・発行。自らもクラシック音楽、歌舞伎、映画などの分野で旺盛な執筆活動を続ける。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
69
同著者の第二次大戦中のクラシック演奏家たちを描く「戦争交響曲」の続きといえる新書。冷戦の始まりと終わりまでの歴史に振り回される巨匠たち。ショスタコーヴィチとムラヴィンスキーとバーンスタインが軸。ショパンコンクールのポゴレリチ事件のエピソードなど興味深い。各演奏家のエピソードはバラバラに知っているが、歴史とまとめていくのは労作。ただ平坦に感じるところもあるが、それを避けるとしたらこの厚い本がもっと厚くなるのは必須だろう。個人的にピアニストシフラのデビュー前の話は初耳だった。言及される公演のCDリストつき。2017/11/15
けぴ
35
著者の中川さんの『カラヤンとフルトヴェングラー』が面白かったので、本作も読んでみた。第二次大戦後からベルリンの壁崩壊までのクラシック界が、東西冷戦に巻き込まれ、思うように活動できない様が描かれる。バーンスタインとムラヴィンスキーが中心に話がすすむが、様々なエピソードを漏れなく記載しようとしたせいで、雑駁な展開。焦点を絞って半分くらいのページにまとめた方が良かったのではないか、と感じた。2019/07/20
流之助
11
冷戦期の文化交流について。祖国への愛とその政治体制との軋轢の中で生きる道をそれぞれ見出していく音楽家たち。特に、カラヤンとバーンスタインという巨人の誕生と死についての章にひかれた。日本との影響も。2023/09/24
ボル
10
クラシック音楽を知ることは、ヨーロッパの歴史を知ることになると改めて認識。私はチャイコフスキーの音楽が好きなので必然的にロシア音楽を聞く傾向がある。なのでソビエトの社会主義のベールに包まれたムラヴィンスキーを中心に読んだ。カラヤン・バーンスタイン・ノイマンなど名指揮者の生涯を始め、戦争と言うキーワードに欠かせないショスタコーヴィチのことが掲載されており、興味深く読んだ。失礼な言い方かもしれないが、音楽や音楽の表現には、苦難を乗り越えていこうという意思が名作を生みやすいことを改めて感じた。2019/02/04
DEE
9
音楽家として活動している時期が冷戦時代と重なっていた、カラヤン、バーンスタイン、ショスタコーヴィッチ、ムラヴィンスキーの四人を活動を追いながら、冷戦とはいかなる時代だったのか語られる。 とにかくソヴィエトという国は面倒くさい国だったんだなということ。 今も変わらないのかもしれないが… コンサートやコンクールにも政治が深く絡み、それを嫌って実力ある音楽家がどんどん亡命。 でも、本当に素晴らしい演奏というものは誰も文句がつけられないというエピソードに芸術の力を見た。2018/05/26