内容説明
なんのために、戦ったのか。近代日本の戦争を大胆に読み直す。
目次
序章 近代日本の戦争について
第1章 日清戦争―「第一次朝鮮戦争」
第2章 日露戦争―「第二次朝鮮戦争」
第3章 韓国併合と対華二十一カ条要求
第4章 「世界大戦」―その影響
終章 次の「世界大戦」―その予兆
著者等紹介
原朗[ハラアキラ]
1939年、東京市生まれ。東京大学名誉教授。専門は、現代日本経済史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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白義
18
NHK新書だしよく知らない著者だしとりあえず質も読みやすさも無難な入門書なんだろうな~と思ったらびっくり、参考文献リストも超充実で新書サイズとしては充実した日清、日露戦争史。この二つの戦争が朝鮮半島の権益を前提にして起こったことから、第一次、第二次朝鮮戦争という視点の転換を促し、さらに司馬遼太郎「坂の上の雲」に対して敬意を持ちながら徹底的なマジレスで認識を正していくなどかなり攻めの姿勢も持ち合わせている秀逸な一冊。太平洋戦争と言わずそれ以前から国際情勢が不穏になる構造を示唆してくれていて実に啓蒙的な一冊だ2019/01/09
みなみ
16
日清戦争と言って朝鮮半島で戦ってるし日露戦争なのに旅順とか中国で戦ってるよな……とは前から思っていた。日清・日露戦争を朝鮮戦争と捉える視点で捉え、かつ日露戦争時に既に朝鮮半島を日本が実行支配していることを述べており、その苛烈さがうかがえた。対朝鮮・中国への強硬的外交の歴史をなぞっていく一冊。日清戦争・日露戦争が終わってもその後のパートもボリュームがあり、この本はタイトルよりもサブタイトルのほうが本の内容を表している。坂の上の雲についての記述もあり面白かった。Kindleのお正月セールで買った本。収穫だ。2023/01/24
田園の風
15
近現代史における朝鮮支配の歴史は、日清修好条規、征韓論、江華島事件を発端とする日朝修好条規に遡ることができる。これにより朝鮮王朝は日本に近い開化派と清寄りの守旧派に分かれ内乱が起きる。また、農民の間から東学党が起こり儒教や仏教等の伝統的な信仰を習合させ日本と西洋の駆逐を目指す甲午農民戦争が起こった。そして日朝修好条規により独立国となった朝鮮鎮圧のための出兵すると主張する日本と未だ朝鮮は自国の属邦国とする清との間で意見は分かれ、日本は朝鮮に属邦関係を破棄するよう迫るが拒否され日清戦争が開戦となった。2018/11/19
coolflat
10
著者は、日清・日露戦争を、第一次・第二次朝鮮戦争と名付けている。なぜならその戦争の目的は、最初から最後まで朝鮮半島の支配権を争うもので、戦場も当初はほとんどが朝鮮半島だったからだ。また個々の戦争の特徴を見ると、日清戦争の場合は日本が朝鮮に自ら積極的に乗り込んだという事、日露戦争の場合、日本は韓国を保護国化し、実質的にほとんど併合していたに等しく、普通言われている1910年の韓国併合とは、日露戦争で獲得した支配を形式的に完成したもの(日韓議定書→第一次・二次・三次日韓協約→韓国併合)に過ぎないという事がある2015/06/17
Kazuo
9
筆者は日清・日露戦争は「第一次・第二次朝鮮戦争」と理解し、1884日清戦争-1945第二次大戦の50年を「東アジア50年戦争」(朝鮮・中国)と理解することが日本史の理解に有効であるとする。近代日本史ではなぜか、大事なタイミングで愛国的愚者により失点を起こし(閔妃虐殺等)、輿論はそれを追認してしまう。日本中央政府は「痛み分け」であった日露戦争を、国民に対して「勝った」と宣伝し、国民側は「日本は不敗の国」だと熱狂し、その後の敗戦に共同で突き進んでいく。客観的な事実の理解こそ、シビアな国際政治の戦略には不可欠。2015/12/12