内容説明
俳句は風流な「お芸術」でも自己表現でもなく、最高のスリリングな言語ゲームだ。知識ゼロでも楽しめる句会の開きかたから、「季語は最後に決める」「口語より文語で作るほうがラク」といった目からウロコの作句法まで、きれいごと一切抜きで書かれたラディカルな入門書。
目次
第1章 句会があるから俳句を作る
第2章 俳句は詩歌じゃない
第3章 言葉は自分の「外」にある
第4章 だいじなのは「季語以外」だった
第5章 きわめて大雑把な「切れ」の考察
第6章 文語で作るのは口語の百倍ラク
第7章 ひとリごとじゃない。俳句は対話だ。
著者等紹介
千野帽子[チノボウシ]
勤め人。日曜祭日は文筆家。フランス政府給費留学生としてパリ第4大学ソルボンヌ校に学び、博士課程修了。専攻は小説理論。2004年より文芸誌・女性誌・新聞などに書評やエッセイを寄稿。1997年、たまたま参加した句会がきっかけで俳句にハマり、作句を開始。海外の小説理論やお笑い芸など、「外」の目線から俳句をとらえなおす。2010年に俳人の堀本裕樹と俳句ユニット「千堀」として雑誌連載を開始。観客参加型の句会ライヴ「東京マッハ」の企画・司会を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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harass
74
ラディカルな俳句入門書。俳句とは「ものボケ」だや、自分を表現する形式ではない、などと語る。独学で俳句を学び大学で教えている著者による、俳句とほかの文芸との違いや、基本的な決まりや名句とそうでない句と何がちがうのかなど。何よりも俳句は句会で語り合われるものであり、他者を意識したもので、似たり寄ったりの自己完結した「ポエム」ではないと。まあこの著者の本はほとんど読んでいて共感しているので面白く読めたのだろう。俳句には前から興味があったが、ある違和感がこの本で解消できた。文章表現について考える人にぜひおすすめ。2018/03/17
yumiha
21
「言いたいことがあるなら俳句なんて書くな」と叱られた。そだね~、評論とかエッセイだよね~。やはり俳句とは相性が悪かったのね。でも、俳句はひとりごと(モノローグ)ではなく対話(ダイアローグ)ちゅう考えは面白かった。また、イマイチ理解できていなかった「換喩」について、例を挙げながら分かり易く説明してあって、私にも理解できた。「句帳」をデスノートとふりがなをされていたのには笑わせてもらった。「ポエム動詞」という命名も面白かった。俳句には近づかないけれど、巻末に紹介されていた歳時記や入門書は、興味を持った。 2018/03/11
まみ
18
千野さんのトークイベントにて購入。千野さんのぶっ飛ばした口調でぐんぐん楽しく読めた。凝り固まった頭がほぐされて新しい思考を注入してもらった感じ。今まで俳句を読んでいて、なんとなく好きだな、おもしろいな、これは野暮ったいな、みたいなあいまいな感じでしかとらえられなかったけど、千野さんの「いい句」の定義を読んですとんと納得できた。換喩的=全部言わずに相手に預ける句。読み手の妄想・邪推のツボが刺戟され、想像を膨らますことができる句。そして、俳句は目で読む、ということ。2012/07/10
hakootoko
16
ランダム俳句作ってみたよー。 英文が昼寝の言に混じりだす(歳時記:昼寝、辞書:英文) 夏の星減らず口にも金句あり(歳:夏の星、辞:減らず口) 捨て犬や行水中の二等兵(歳:行水、辞:二等兵) 泥鰌鍋フリーターばかりの菊工場(歳:泥鰌鍋、辞:フリーター) だから何的な句しか出来なーい。 切れ字とか読んでも覚えらんなーい。わからなーい。暗喩だからあかんのか。でも、換喩ってわかったようなわからんような。わからなーい。2017/06/10
おおにし
13
俳句入門書に「言語論的転回」という言葉が出てきて驚いた。俳句初心者は自分が表現したいことを自分の言葉で作句するので、読み手が「で?」っていうしかない俳句(でっていうポエム)になってしまう。それを脱出して伝統的俳句を詠めるようになるには、「言語論的転回」が必要であると著者は言う。要するに自分の着想に合う言葉を探すのをやめて、○○○という言葉を使うという縛りをを作り、それに合わせるための季語や言葉を見つけて句に仕上げる訓練が上達のコツだらしい。俳句は読み手との対話で作り上げる開いた芸術という指摘は新しい。2023/03/31