内容説明
成熟社会の「豊かさ」のなかで、強迫性を強める生き方や、ノスタルジックな解決策に固執する大人たち。時代に適応できない不安と焦燥を子どもたちに投影し、非難することで、自分自身をごまかしていないか―。
目次
1章 大人の不安が子どもに投影されている
2章 「自分という他人」とつきあう作法
3章 「自分とつきあう時間」を持っていますか
4章 人は完全でなくても生きられる
5章 なぜ今、カウンセリングが求められるのか
6章 家庭の絆を創造する時代
7章 カウンセリングから「千と千尋の神隠し」を読み解く
8章 「千と千尋」と生きる力
9章 小さく生きる哲学
著者等紹介
小柳晴生[オヤナギハルオ]
香川大学教育学部教授・前同保健管理センター所長。臨床心理士。1950年、石川県生まれ。学生相談カウンセラーとして24年、学生や子どもの声に耳を傾けている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kasagumo
3
少なくとも経済的側面においては、若者は貧困になっているという感覚があるため、豊かさという言葉には留保しつつ読んだ。但し、出版から10年以上が経過しているとはいえ、情報過多に対する対応の仕方については現在でも、むしろこれからの方が重要になっていくように感じた。また、後半の千と千尋をカウンセリングで読み解く章では物語が持っていた象徴的な意味が明晰に述べられていて、作品をまた観返したくなった。(最後に観たのは何年も前なのに、説明されている場面は大抵覚えていたことにもびっくり)2016/03/17
Ayumi Yamashita
2
学生相談カウンセラーとして,学生や子どもの声に耳を傾けてきた著者。相談室で語られた数多くの若者や子どもの悩みや言葉から,私たちがどのような変化に放り込まれているのか,どんな時代を迎えようとしているのか,激しい変動にどう身を処していけばいいのか読み解こうと挑戦した所産です。2005年第一刷発行。2014/01/07
AI
1
活動の速度と量を増加させて現代社会を生き抜くのではなく、やらないことを決め活動のスピードも量も減少させて生きていく重要性を説く内容。こどもの教育への姿勢にも一石を投じる内容となっています。ちょっと緩すぎるのではと感じる下りもありましたが、日本人には欠けている姿勢かも知れないと思いました。2017/08/26
かいけん
1
社会に適合できない子どもたちが増えているのではない。世の中が豊かになり社会が変容したことで、子どもたちに求める姿とそれを受け入れる社会にズレが生じてきたのだ。だから大人はしっかり足元を固めて、不必要に背負っているものを降ろそう。そうでなければ子どもたちを受け止めることも、支えることもできなくなってしまう、と語るカウンセラーの話し。後半の「千と千尋の神隠し」に対しての著者による解釈は面白かった。異界の話しだから「坊」に特別違和感を感じてなかったけど、そうかあれは子どもから抜けきれない大人なのか。2015/06/13
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- 学問芸術論 岩波文庫