内容説明
高杉晋作から大江健三郎まで、中国に深い関心を抱いて現地を訪れた日本人は少なくない。幕末からの一五〇年間、日本人は中国とどうつき合ってきたか―。今、ビジネスパートナーとして注目を集める中国の近代史を、現地に足跡を残した日本人約二〇人の見聞を通して読み解く、まったく新しい中国理解のための入門書。
目次
高杉晋作―「租界都市」上海の繁栄と外夷の影
血脇守之助―天津、有力者の胸襟を開かせた歯科治療
後藤新平―「生物学の原理」にもとづいた植民地台湾経営
夏目漱石―列強に追随する日本への疑心
清水安三―北京、魯迅との交友
吉田茂―張作霖との会談、満州特殊権益を拡大せん
川喜多長政―上海映画界を守り抜いた電影人の矜持
李香蘭―敵対する二つの祖国、わたしはいったい誰なのか
中薗英助―占領下の北京、友よ、交戦国のわが友よ!
森繁久弥―「満州国の夜の支配者」甘粕正彦の思い出〔ほか〕
著者等紹介
藤井省三[フジイショウゾウ]
1952年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程修了。文学博士、東京大学教授。専門は現代中国文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ハチアカデミー
4
C- 莫言『酒国』(傑作! 求む岩波現代文庫化)の訳者による、近現代中国と日本人をめぐるエッセイ。ざっくりと日中の人的交流を知るには良いが、各章の短さ、語り口のポップさ故か深みがない。気になっている作家・島薗英助についての言及があった点と、莫言とも交流があるという茅野裕城子という作家を知ることができた点は収穫。著者の描く、アジア文学という視座に面白味を感じているのだが、魯迅から急に春樹に飛んでしまい、それを結ぶ作家が見えてこない。本書で何か手がかりが掴めるかと期待していたが… 残念。2012/03/22