内容説明
未完成であったり、まとまりの悪い作品を多く残した漱石の、その謎とはなんなのか?近代国家と近代社会の成立現場を目撃し、そこを舞台に小説の文体で思想を提示し続けた漱石。時代を超えて読み継がれてきたその作品群は、大きな変動期といわれる現在、きわめて示唆的である。
目次
教科書のなかの「漱石」像(漱石、民主化;漱石、保守化)
テクノロジーの近代
愚直な学習者
『それから』―「繊細な感受性」の創出
『門』―「平凡人」の不安症候群
変人漱石
『彼岸過迄』―漱石の「物語」批判
『行人』―妻の魂で悩む恋愛主義者
『こゝろ』―片付いた物語
『道草』―夫婦喧嘩の可能性を開く
『明暗』―ロマンチック・ラブの外へ
著者等紹介
佐藤泉[サトウイズミ]
1963年栃木県生まれ。1995年早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得。同年青山学院女子短期大学専任講師。1998年早稲田大学大学院文学博士学位取得。現在、青山学院大学助教授
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感想・レビュー
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猫丸
13
「言葉と物」はチャート式だ、と浅田彰あたりが言っていなかったか? あたかも西洋思想早わかりという風情ゆえに。本書もチャート式漱石と呼ぶにふさわしい出来上がりである。多くの漱石論の要点を織り込んで一書にまとめてあるのは便利だ。特に現代思想系読解の所産を取り入れているのが目立つ。著者独自の主張は要するに「漱石作品は割り切れない」ということ。そのためいくつかの作を失敗作と認定する。が、それが良いのだとも。教科書における漱石の扱い、外発的発展の根底がマードック由来、キレイに終わるのが「こころ」のみとの指摘が有用。2019/04/26
あなた
11
漱石テクスト入門として最適最良の著書。漱石入門は頑固で理論派の石原千秋でもなく、左へ左へとアジっていく小森陽一でもなく、漱石テクストをひとつずつやわらかくかたづけていった女性・佐藤泉を私は強く薦める。とくに彼女のヴィリリオを使ったテクノロジーとまなざしからの「趣味の遺伝」論は学生時代、感銘をうけた2010/08/21
マカロニ マカロン
10
個人の感想です:B。国立市公民館で読書会の講師を長く務めて、様々な解釈を紹介して下さる佐藤泉先生の本だが、出版が20年以上前の2002年で、さすがに古さがある。冒頭部で2002年からの新指導要領(いわゆる「ゆとり教育」)に触れて、この春から漱石と鷗外が中学教科書から消えると書かれている。内容は近代と文学に焦点をあてて、佐藤先生ならではの興味深いものも多いのだが、社会状況がかなり変化した20年後に読むと文学と社会の関連への解釈に違和感が残るのも事実。本としての寿命を感じた2023/11/23
ぶらり
4
題名と表紙がカッコいい。内容は?すいません、漱石文学論集の「創作家の態度」等を読んだ辺りから、漱石の作品論は頭に入らない感じ。併読していた「闊歩する漱石」は世界文学という新たな着眼点に引き込まれたのだけど…。精緻にして斬新な分析だとは思うのだけど、漱石の全体像に向かっている今の私には消化できない。作品読んだ後に読もう。2010/10/04
396ay
2
面白い!買いたいくらい!著者は国語の教科書についての著作も出版しており、漱石・鷗外の教科書史における位置づけも詳細で面白かった。もちろん漱石文学評論も面白いし、『行人』以外のものも読む価値がある。何より読みやすい。2020/10/04
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