内容説明
政治的リアリティでもって、キリスト教的倫理観を排し、「権謀術数の書」として物議を醸した『君主論』。現代では帝王学のマニュアルとして切り貼りされがちだ。しかし、それが政庁への再雇用を求めたマキャベリが自分のために、自分の経験をもとに記した「政治実践の書」であったことはあまり知られていない。ルネサンス期のフィレンツェで辣腕をふるった書記官による、乱世を生き抜くための政治哲学を紹介する。東郷和彦氏との対談/読書案内/年譜を新たに収載。
目次
はじめに 『君主論』は再就職のための論文だった
第1章 『君主論』を書かせた思い
第2章 政治と倫理を切り離せ
第3章 運命は「力量」で変えられる
第4章 マキャベリその伝説と実在
対談 武田好×東郷和彦―外交交渉の本質は今も昔も変わらない
著者等紹介
武田好[タケダヨシミ]
1961年大阪府生まれ。大阪外国語大学大学院外国語学研究科イタリア語学専攻修了。現在、星美学園短期大学准教授、慶應義塾大学非常勤講師ほか、NHK語学番組「テレビでイタリア語」講師、NHK神戸文化センター講師を務める。1998年から2009年までNHKラジオイタリア語講座入門編、応用編を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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にいたけ
41
君主論の解説に最適。書かれた時代背景、何故書くに至ったかがわかりやすかった。反面、君主論自体についてはあっさりと。という感じ。この君主論という論文で取り立ててもらおうとしたマキャベリは上手くいかず失意の中なくなってしまう。君主論も教会から禁書扱いでしばらく日の目をみなかった。それでも現代まで読み継がれているのは本質をついたところがあるからだと思いたい。2021/04/11
aisu
19
君主論の内容と、マキャベリの生涯や、その時代が説明されていて、わかりやすかった。私も著者の様に、マキャベリさんに愛着が湧いてきた。マキャベリ研究の周辺もわかった。もっと学びたい人への本の紹介されていて、読みたくなった。2016/02/10
白義
16
冷徹・残忍・苛烈な権謀術数の書と呼ばれるマキャベリの君主論。しかしそれはテクストの成立背景もマキャベリという人間の真意も無視した後世の伝説に過ぎない。生真面目で優秀だが自意識過剰な愛すべき中年マキャベリが、失業中に書いた売り込み用論文として君主論を読み解き、その前提となるフィレンツェの歴史まで軽く触れた優れた入門編。政治と倫理の切り離し、変え難い運命を変えられる人間の意志の強調と、現代にも意義がある近代的政治学の原点として重要だが、それ以上に当時の時代のコンテクストが絡み合った書物としても面白そうに思える2017/01/20
keint
8
本番組未視聴でかつ名前のみしか知らないマキャベリだったが、本番組の冊子と似た構成かつ充実した情報で読み応えがあった。君主論は倫理よりも政治を優先させるという考え方もあり、一つ一つのフレーズが取り上げられることも多いが、外交官としてのマキャベリや彼が生きていた当時のイタリアの歴史的背景を踏まえないと間違えた見方になってしまうことを知れてよかった。2020/11/20
らる
5
君主論はマキャベリが再就職のために書いた論文/君主は「ケチ」であれ/恩情をもつよりも「冷酷」であれ/愛されるよりも、「恐れられる」存在であれ/慈悲深く、信義に厚く、人情味があり、表裏なく、敬虔である…ように「見せる」こと/人の恨みを買ってはいけない。特に、財産や婦女子を奪わないこと/軽蔑されないようにすること、そのために「勇猛」であり「重厚」であり「剛直」であるようにふるまうこと/中立でいてはいけない。かならずスタンスをはっきりさせる。そうでないとどちらが勝っても何の利益もえられない2023/02/04