内容説明
アルルの耳切り事件に隠されたゴッホとゴーギャンの息づまる対立。共同アトリエは協調である。だが、絵画は妥協を許さない。この矛盾の狭間で、二人の画家は自らの表現を賭けて闘わなければならなかった。「黄色い家」の60日で起きた出来事を克明に描く迫真のノンフィクション。
目次
序章 一八八八年十二月二十三日、日曜日、アルル
第1章 ポール・ゴーギャンの書き綴った当日の話
第2章 宿命の出逢い
第3章 訪問
第4章 『ジヌー夫人』
第5章 兆候
第6章 『向日葵を描くゴッホ』
第7章 『カミーユ』と『アルマン』
第8章 『自画像』
第9章 不安の渦巻くダンスホール
終章 二人のゴッホ
著者等紹介
小林英樹[コバヤシヒデキ]
1947年、埼玉県に生まれる。1973年東京芸術大学・油画専攻卒。大阪・中の島美術学院で講師を経て、札幌に移る。以来、札幌を中心に作品を発表してきた。現在は北海学園大学教授。初の著作である『ゴッホの遺言』は、多くの読者から絶大な評価を得、日本推理作家協会賞(評論その他の部門)を受賞
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感想・レビュー
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GaGa
19
黄色い家と呼ばれる、ゴッホとゴーギャンの共同アトリエで、ゴッホがどうして、自分の耳を切り落とすような行為にいたったかを克明に記したノンフィクション。ただ、裏付けよりも憶測が多くて、これをそのまま鵜呑みにはできないと思うが。まあ、色々と想像を巡らせるのはよいことだ。2010/07/12
miya
12
美しくも悲しいゴッホの叫びが作品と共に今を生きているんだと感銘を与えてくれる。2013/06/18
ばな
3
ゴーギャンとの共同生活が破綻して、狂気に憑かれたゴッホはゴーギャンに切りつけようとして失敗し、自分の耳を切り取る。有名なエピソードですが、著者の指摘通り、ゴッホの死後に発表されたゴーギャン側の証言ばかりを元にしてるんですよね。ゴッホの異能にゴーギャンは嫉妬を覚えていたのではないか。そんな視点での二人の関係の再検証は、”こういう雰囲気、あったかもなぁ”と思わせます。でも、肝心の耳を切った経緯については、ちょっと説得力に欠けました。2011/05/29
舟華
1
いわゆるゴッホの「黄色い家」と今でも呼ばれているアトリエでゴーギャンとの共同生活をした日々を、完全な著者の独自見解で物語仕立てに語っている。ゴッホはどうして耳を切り落とすような真似をしたのか。その動機は当人以外の人物には分からないが、これまで私が読んできたものとは違った見解を示していた。決して仲良しこよしの共同生活ではない、お互いが激しいライバルだから、ちょっとしたことが引き金だったのかもしれない、なんてことを思わせてくれた。 ◆読むのに時間がかかりましたー2024/01/21