内容説明
三四郎は周知のごとく、夏目漱石の小説『三四郎』の主人公である。1908年、遠く熊本から上京し、帝国大学へ入学したその三四郎が見た東京、そして歩いた東京。1世紀近くを経て、東京はなにが変わってなにが変わらなかったのか。新橋、銀座、丸の内、神田、お茶の水、本郷、そして五高時代をすごした熊本と、三四郎が歩いたであろう足跡をたどりながら語る、『東京学』の著者・小川和佑氏が贈る新しい東京学。
目次
三四郎のいる風景―序にかえて
東京での第一歩
三四郎、銀座を往く
江戸切絵図と神田川畔
本郷台初秋
銀杏並木の色づくころ
秋の果てまで
熊本の空と樹々―エピローグ
著者等紹介
小川和佑[オガワカズスケ]
1930年東京生まれ。明治大学卒業。文芸評論家。おもな著書に『桜と日本人』(新潮選書)『桜誌―その文化と時代』(原書房)『日本の桜・歴史の桜』(NHKライブラリー)『東京学』(新潮文庫)『刀と日本人』(光芒社)など。その他にも、昭和文学の詩と思想を中心にした文学論、作家詩人研究等がある。日本文芸家協会会員、明治大学・東京電機大学兼任講師
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感想・レビュー
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猫丸
17
都市と文学といえば前田愛なんであるが、遠い昔に読んだので記憶にない。本書も同じテーマ。ただしポストモダン的方面には走らず、明治の文明開化進展にともなう都市学生の精神変容を実直に捉えようとする好編である。熊本から上京した三四郎が新橋駅を降りたあと、徒歩にて辿ったであろう明治当時の道と現代の自動車鉄道網を重ね合わせて眺める。明治人は実によく歩いた。新橋から万世橋を経て本郷界隈へ。特にお茶の水あたりは職場が近いので、よく知る土地だ。土地には謂れがあり、歴史が積もる。それゆえに精神的地図が形成される。2021/07/30
マカロニ マカロン
12
個人の感想です:B+。『三四郎』文学散歩の参考本。三四郎が九州から上京してからラストの美禰子の中央會堂まで明治当時の東京の地理を詳しく解説している。三四郎が新橋駅に着いて下宿のある追分町まで歩いてたどり着いたとはこの本を読むまで思ってもみなかった。現代人では絶対に歩く距離ではないが、この時代の人たちはよく歩いた。美禰子や広田先生の住宅を特定するのにとても役に立った本。三四郎の学帽が本のカバーのような麦わら帽子だったとは新知識。西片町や本郷、東大構内は空襲を免れたらしく、古い建物があり三四郎気分を味わえた2023/09/21