内容説明
『断腸亭日乗』を経済・金融から読み解く。生活者としての永井荷風にエコノミストが迫る画期的評伝。
目次
私は荷風に会った
芸術至上主義宣言としての荷風日記
荷風日記はすぐれた経済史の文献
第一次世界大戦とインフレ
労働問題・思想問題と荷風
地価の暴騰と荷風の財産売却
大正九年以降の長期不況
荷風の女性遍歴とそのコスト(小勝・富松・八重次(藤陰静枝)
米田みよ・中村ふさ・田村智子・清元秀梅
鈴乃・今村栄・大竹とみ ほか)
関東大震災
大正末年の経済的行き詰まり〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
117
鴎外の研究家で知られるエコノミストの吉野さんによる荷風の膨大な日記からの昭和初期における経済状況をエッセイとしてまとめたものです。20年前に読んだときにはさらっと読んでしまいあまり気付かなかった部分を確認することができました。荷風は鴎外に一番弟子ということと、吉野さんの住まい近くに荷風が住んでいたことから、出会ったこともあってこのような作品を書かれたようです。荷風は金をかなり持っていたので市井の人々の生活とはかけ離れているので一般人の経済状況とは言えませんがかなり参考にはなります。2019/08/16
tatuki
1
楽しい。日記が如何に歴史解読に必須か。時系列の記述。荷風の書いた市井の経済データを解読する本書は実に面白い。荷風は富裕だった。その獲得された自由をファイナンスで補った。エロを自らの肉弾で捕獲しながら日記に書いた。つくづく文学は「日記」が源泉だと思う。2018/11/01