出版社内容情報
分断された平和な日々の再生を願って、明日へと続くペダルを踏み続ける
本間優一は、多少のさざ波はあっても大過なく仙台で会社員生活を送ってきた。50代半ばに差し掛かり、健康上の理由からロードバイク(本格的なスポーツ用自転車)に乗るようになる。部下の唯の指導を受けて、優一のロードバイク技術はめきめき向上していく。思えば本気になって趣味に打ち込むことは、いままでに経験のないことだった。おりしも新型コロナウイルスのパンデミックが仙台にも広がり経済にも影響を及ぼすように。そんな息苦しい状況にあっても、自転車を通して、優一たちは新しい扉を開いてゆく。直木賞作家であり、自ら愛車を駆りイベント入賞も果たす現在最も自転車に詳しい作家が、ロードバイク愛を込めて描く感動の物語。
内容説明
50代半ばの男性が、健康を理由にはじめたロードバイクにのめり込む。折しもコロナ禍、会社の業績不振という息苦しい状況が訪れるなか、会社では部下、自転車では師匠となる女性とともに新しい扉を開いてゆく。
著者等紹介
熊谷達也[クマガイタツヤ]
1958年、宮城県生まれ。東京電機大学理工学部数理学科卒。1997年、『ウエンカムイの爪』で第10回小説すばる新人賞を受賞。2000年、『漂泊の牙』で第19回新田次郎文学賞、2004年、『邂逅の森』で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞のダブル受賞を果たす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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のぶ
119
爽やかな小説だった。印刷会社で働く50代半の主人公、本間優一はコレステロール値の指摘を受け、ロードバイクを始める事になる。会社の部下の水野唯の指導を受けて、優一のロードバイク技術はめきめき向上していく。この描写がとても良い。折しも時期は新型コロナウィルスの流行が始まった頃。そんな状況下でも自転車を通して新しい道を開いてゆく。健康の数値は目覚ましく改善し、生きがいを感じてゆく。一方である時に勤務先である出来事が発生し、優一の人生は転機を迎える。仕事の部分でも人の絆が良く描かれていて、心に沁みるものがあった。2022/07/03
みかん🍊
115
健診結果から医者にイエローカードを出され、ジムでもと思っていた所のコロナで走るのは続かなさそうだしと悩んでいたところ部下に勧められ始めたロードバイクに嵌まる、コロナ禍を背景に50代半ばから震災やコロナで今までと世界が変わって新たに明日へのペダルを踏んでいく、未だにテレワークでなく顔を合わさないととか残業するのが仕事熱心な社員、効率良く仕事しても定時に帰る事を良く思わない頭の硬い上司はまだまだいる、会社も社会も変わってきているのに何でも昔はと適応しようとしないのはいかがな物か柔軟に生きて行きたいものです。2022/08/22
ウッディ
111
コレステロール値が高いという健診結果をきっかけに、部下から勧められたロードバイク、予想以上の値段に怯むが、一目ぼれしたマシンを手に入れ、自転車の爽快感にハマっていく55歳の本間。コロナ禍で仕事のやり方も、人との距離感も変わっていく中、自転車をきっかけに、成長する主人公を描いた良作。他人事とは思えない主人公の設定に共感しながら、ロードバイクの魅力が存分に描かれていて、自分も自転車屋さんを覗いてみようかと思いました。部下に慕われ、人間的にも成長し、健康になっていく主人公が眩しかった。とっても、面白かったです。2022/12/13
きむこ
103
『サクリファイス』で自転車競技に目覚めた私だけれど、もっぱら観戦専門。若い人でロードバイクに興味がある人なら、この作品を読んだら今すぐにでもショップに駆け込むかも🤣初心者のロードバイクの選び方やパーツの決め方、その他ロードバイク初心者ガイドブックのような内容。優一の『デローザアイドル』はググってチェック。ホント可愛くてカッコいい♡熊谷さんならではのきめ細かな説明に、もしかしたら私でも乗れるかも?と誤解してしまう🤣エスケープトレインの須藤さんも登場しています!楽しく読了。★42022/08/17
ゆみねこ
92
55歳の本間優一は健康診断のD判定でロードバイクを始めることに。優一の師匠は部下の水野唯。ときは2020年春、コロナの流行と会社の業績不振が影を落とす。コロナ禍の息苦しい現実とその中でも前を向き新しい扉を開いてゆくストーリーに引き込まれ一気に読了。仙台の地理がわかるとより面白さが増します。コロナが落ち着いたら仙台に行きたいです。2022/07/29