内容説明
ヒノキの産出で知られる木曽地方の森林地帯。良質な木曽材は、日本の伝統的な木の文化に大きく関わってきた。近世以降の厳しい保護によって形成された美林の履歴と、自然と調和し、山とともに生きる木曽人たちの生活譜を紹介する。
目次
1 「木曽式伐木運材図絵」の世界(森に生きた杣人たち;伝統的な山落しの手法;自然を生かした小谷狩り;大川狩りとナカノリサン;筏送りと海上輸送)
2 木曽の森林と林政(木曽五木の美林;木曽ヒノキの特質;赤沢の自然休養林;木曽山利用の歴史;尾張藩の山林制度;『夜明け前』の木曽谷;国有林の果している役割)
3 木曽林業のいまむかし(木曽谷における森林鉄道;育林と木林生産;伊勢神宮の遷宮材;木をふんだんに用いた民家;薪木の利用と囲炉裏;クマザサ山の利用;森の中の野生動物と狩猟;渓流魚の漁撈)
4 木曽材でつくられる民具(木曽の風土と漆器製造;木目の美しい野根板;街道交通とお六櫛・塗り櫛;轆轤細工をつくる木地師;日常生活と結びついた木工品;木曽小木工品の盛衰)
5 森と木曽人の生活(木曽馬の飼育と草山;ヒダミなど木の実の利用;トチの実・クリと花漬;ササの実・ワラビ粉・山菜;ソバ栽培とその食文化;ヒエ作とダイコン栽培;赤カブ葉とササ葉で巻いた保存食;御岳山信仰と百草丸;山村集落滝越の暮らし)
感想・レビュー
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翔亀
47
学者による木曽フィールドワーク。書名に"暮らし"とあるから民俗学寄りの書かと期待したが、1)木曽の森林・林政史2)林業・木工業・民具3)食文化=地域の食材という、ちょっとまとまりのない構成。でも藤村「夜明け前」で木曽に浸った後で読むと面白くはあった。1)は、なぜか既視感があったのだが、「夜明け前」に全て語られていた事に気づく。藤村は林政史をきちんと押さえていた、ということだ。江戸時代の初期に破壊されていた森林が藩により保護されてヒノキ天然林が"生まれ"たこと。それが現在にまで引き継がれているその先見性を。2016/10/26