内容説明
イタリア・オペラのプリマドンナ、ジュリエッタ・シミオナートの“声”に惹かれて、イタリア文学を志した著者は、その歴史の深みと人々の生命力あふれる生活へと誘われた。古代ギリシア・ローマの壮麗な文明の光と、第二次大戦下の過酷な翳りの痕跡を刻むイタリアという国。シチリアの戦後文学の空間は、地中海に浮かぶ島の風土と濃密な家族の絆を歴史の襞に忍ばせている。壊滅的な被害を受けた阪神大震災後の神戸とイタリアを往還しながら、日本から見たイタリアと、イタリアから見た日本を描き出す。
目次
1 旅のはじまり(あの“声”のむこう側;光と闇の島、シチリアの作家たち)
2 旅のよりみち(谷崎の家「倚松庵」が危ない!―もうひとつの日本批判;あれから九年、「倚松庵」の不思議な物語―ヴェネツィアにおける谷崎潤一郎国際シンポジウムでの報告をもとに ほか)
3 合わせ鏡のように(イタリアの“声”をあつめて)
4 旅はつづく(十七年目の夏;イタリアで本をつくる)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Noburin
0
Mar.11/20132013/03/11
Takumi Kobayashi
0
もっと早く読んでいたかったと思う。 文化は、人間集団の心理は、ローカル・アイデンティティはどのように感じることができるのか、異文化においてそれはどのように可能なのかということをこれほど印象的に、またわかりやすく、押し付けがましくなく魅せてくれる。 ここまでのものを書けるようになるまでどれほどの苦労があったのかということに思いを馳せつつも、同じく人間・社会を対象を研究をする人間として、その蓄積をこのように表現できればと思わずにはいられない。2019/01/11