内容説明
非公開の時効が切れ、続々公開となる米アーカイブスに眠る国家安全保障会議メモランダムから明らかとなる一九七二年沖縄施政権返還の裏面とは。核再持込みの密約、米軍基地の自由使用、六億ドル余りに上る巨額の財政取決などをめぐり、日米首脳の思惑が交錯し水面下で「密約」が交わされる過程と真実が鮮やかに描かれる。敗戦後、日米関係の切札として沖縄が利用されつづけ、翻弄されてきた経緯を日米戦後交渉史の中に捉え直す試み。長年、情報公開資料の発掘に挑んできた気鋭の国際政治学者が積年の成果を掛けて問う意欲作である。日本の保守政権が沈黙のベールの下に隠しつづけてきた真実が、ついに今あきらかとなる。
目次
第1章 安保条約とは何か―不平等は是正されたのか
第2章 施政権返還の背景―米政府の思惑
第3章 米国の交渉戦略―研究資料が示す舞台裏
第4章 交渉開始―愛知・マイヤー会談から
第5章 佐藤・ニクソン共同声明―核再持ち込みの密約はあったのか
第6章 もう一つの密約―日米で食い違う巨額の補償費
終章 もう一つの断面「ガイドライン関連法」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
二人娘の父
13
先に読了した『ドキュメント 沖縄経済処分――密約とドル回収』との関連で読んだが、経済・財政についての返還交渉の項目で同じことが触れられている。密約の詳細などについて精査してみたいが、発刊時の2000年当時で、すでに基本点は抑えられていたのだということが確認できた。先に読んだ本では先行研究がまったくなく「異色のドキュメント」と言われていたが、それはやや過剰な表現なのではないかと感じた(著者はジャーナリストで、研究者ではないので仕方ないか)。関連した著作を、問題意識を持って読み込むことの重要性を再確認した。2022/02/19
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