NHKブックス<br> 子育てと出会うとき

NHKブックス
子育てと出会うとき

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  • サイズ B6判/ページ数 249p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784140018521
  • NDC分類 599
  • Cコード C1336

内容説明

育児はすばらしい経験であり、多くの喜びと発見を分かち合う営みだが、なぜ母親だけが犠牲になり、生活の全てを子育てに捧げねばならないのか。子どもが可愛く思えないときもある。社会で働く夫に比べて、自分だけ取り残され、子育てに束縛されていらいらするときもある。しかし、母性への幻想が女性の桎梏となり、行き場のない不全感、閉塞感に苛まれ、自分を見失ってしまいそうな人が増えている。本書は六千人の聞き取り調査をはじめ積年の母性研究の成果から、子育ての実態と母親の苛立ちに迫り、母子と社会とのつながりのネットワークや、男と女が仕事と家庭を、対等に担う新たな子育てを模索する試みである。

目次

第1部 子育てに虚しさを感じるとき―母親たちの声から(今どきの母親症候群;互いに孤独な夫と母親たち;子育ては母親の至福の喜びか?;母性神話からの解放と未成熟な父母たち)
第2部 再び、子育てと出会うとき(母性神話にふりまわされないために;新しい子育てを求めて―子育てを孤立させないために;性を超えた子育ての時代に―若い世代に送るメッセージ)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

katoyann

21
「子育ては女性の母性にこそ適性があるとする母性観」(46頁)により、強い負担感を覚える女性の苦しみに焦点を充てた内容である。発達心理学の研究知見に基づき、虐待に走る母親がしばしば孤立無援の状態に置かれていることを指摘する。また仕事との両立が難しく、育児のために仕事を断念せざるを得ない女性の鬱屈とした感情に注意を促す。男性稼ぎ主型の性別役割分業が温存される一方で、女性は仕事での自己実現欲求を持ちつつも、子育てのために自己を犠牲にする。20年前の論稿で指摘された課題が特に克服されていないことに寒気を感じた。2021/09/13

みなみ

11
恵泉女学園大学学長・大日向雅美の著作。最近の(といっても90年代である)の母親は自己中で非常識でと言われるが……という風潮の紹介から始まる。彼女ら母親の必死さは世間から取り残された孤独や焦りからきており、彼女らを家庭に閉じ込める社会や夫の意識が原因になっているという。母親は育児を楽しむものだから育児を母親にまかせようという常識めいた幻想はいつ定着したのか、考えさせられた。今でも抜本的な改善や意識改革がなされているわけではない。2023/12/20

keepfine

3
他著で大日向氏の母性神話批判に共感した。前半の母親役割の規範に苦しむ母親たちによる虐待事例の紹介はショッキング。中盤では歴史的にいかに母性神話が形成されてきたかを論じ、中世ヨーロッパや江戸〜明治期における子供の扱いに照らして母性が自明でないこと、また朝鮮特需〜高度成長期の企業社会が母性神話を強固に定着させた経緯など、概括的にまとめている。結びの展望は然もありなんという提言であるが、イギリスにおいて母親が子育ての苦労を感じながら虐待に走らない一因として「主体的選択としての出産」という分析は示唆がある。2018/03/07

永野間かおり

2
14年前に書かれた本であっても内容が一つも色褪せないのは、それだけ子育てとそれを取り巻く環境も問題にもさして変化が見られず、依然として母親は母性神話に縛られ、子育てする自分のアイデンティティを喪失し焦りをもち続けているからではないだろうか。2013/02/06

田舎本屋店員A。

2
子どもを産むと人格をすべて無視して『母親』という役職だけで生きていく事を強いられる。母親である前に女であり、私である。そのことを、かつて愛した男は『父親』という役職がついたとたん忘れたらしい。 彼は世間話をつまらないと言う。狭い世界に閉じ込めて、つまらない人間にしたのは貴方なのに。昔の私はつまらなくなんてなかった。 子育ては幸せではない、母親の仕事ではない、無償の奉仕でもない、そんなことがあってもいいじゃないか。そんなこと思っても良いじゃないか。 だって私は『母親』である前に個人なんだから。2013/01/22

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