内容説明
「緑の危機」が、いま、地球規模で警告されているが、わが国ではすでに江戸時代、大規模な築城や土木工事に伴って、自然林の乱伐・荒廃は深刻な問題となっていた。事態に危機感を抱いた藩士らは、100年後に見越した植林など、森林の保護・再生に乗りだしていく。野呂理左衛門ほか、全国各地の緑の再生に尽力した人々の実績と人間像を追って、著者が実際に現地を訪れ、足でまとめた人物列伝。
目次
1 森林を蘇らせた日本人(野呂理左衛門―飛砂との苦闘史〈青森県〉;古橋源六郎暉児―地域共存共栄の古橋林政〈愛知県〉;船津伝次平―赤城山麓の水源涵養計画〈群馬県〉;蔡温―儒教倫理と造林政策〈沖縄県〉;亀井〓矩―「琉球之助」の鷲峰山植林〈鳥取県〉;上杉鷹山―勧農政策の名君〈山形県〉;野中兼山―船舶輸送と「番繰山」〈高知県〉;熊沢蕃山―経世済民論と『大学或問』〈岡山県〉;大谷休泊―低湿地の土木事業〈群馬県〉;粟野林太夫―開拓者としての氏神「林八幡」〈静岡県〉;原玄琢と藤野孫一―吉野の杉種を隠岐で育てる〈島根県〉;加藤九蔵―木の下の水源涵養林〈滋賀県〉;栗田定之丞―日本海の季節風と砂防造林〈秋田県〉;興野隆雄―『太山の左知』に語る造林への意欲〈栃木県〉)
2 現代へのメッセージ(“先人”登場まで―太古より江戸期までの林業の流れ;時代、“先人”を生む―江戸期の状況;“先人”の軌跡より―現代の“内省”の問題として)