出版社内容情報
アニマルウェルフェア――〈動物への配慮〉という発想.それは動物の命を大切にすることであり,苦痛や苦悩からかれらを解放することである.人類生存の糧となる動物たちにとって<幸>せとはなにかを問い直す.
目次
第1章 西欧からの発信
第2章 「かわいそう」を科学する
第3章 倫理から法律へ、批判から建設へ
第4章 「動物への配慮」の系譜
第5章 「動物への配慮」は人間の本質
第6章 文化を越えて
著者等紹介
佐藤衆介[サトウシュウスケ]
1949年宮城県に生まれる。1973年東北大学農学部卒業。1978年東北大学大学院農学研究科博士課程修了。東北大学大学院農学研究科教授、農学博士
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
60
アニマル ウェルフェアと言う言葉を、初めて知りました。動物の福祉では在るのだが、個体ごとの幸せを科学的に客観的に考える概念らしい。というのも、日本人と外国人の間だけでも、動物に対する感情が違うという事で、私自身はしっくりいく理解が出来ていない。例として、日本人とイギリス人の動物に対する感情の違いを載せているが、こんなにも違うのかと驚きが大きい。日本人の命を重要視する事に対して、イギリスでは意識を重要視するという違いは納得だった。また動物も他の動物に配慮して生きているなど、知識本として興味深い発見もある。2017/12/18
buuupuuu
12
畜産や動物実験などにおける動物の取り扱いの実態や、動物の苦痛や苦悩がどう科学的に捉えられているか、また、法整備等の社会的取り組みなどを紹介すると同時に、動物への配慮が進化的起源を持つとも述べている。興味深いのは、文化によって動物への配慮のあり方が異なるという指摘である。遊牧民を起源とする西欧文化が動物のQOLに着目するのに対し、農耕民を起源とする我々のような文化が重視するのは動物の不殺生である。西欧発のアニマルウェルフェアは我々の感性とぶつかることもあるが、両者は補い合うものとして考えていくべきだとする。2022/01/10
ハパナ
4
動物の幸せについて純化して抜き出すと、”道徳性の起源”という本にも通ずる所があるのだと思いました。実験も含めた広い意味で商業利用のための動物に対する幸せという考え方は、国柄や宗教観によっても基準が変わって来るので一般化は難しいのではないだろうか。まずは最終到達点である消費について、主には先進国での過剰摂取・余剰生産・極度の低コストという所の見方を再考する必要がありそうですね。そうでないと結局は、無意識でのマッチポンプになってしまうと思います。2015/06/21
kk
3
アニマルウェルフェアとは「動物の幸せ」レベルである。・・・そして、このテーマは、「動物の幸せ」を考えるなかから私たちはどう生きるかを問い直す絶好の機会でもある(pp.i-ii)。西欧キリスト教文化圏における動物への配慮の底流には「かわいそう」という共感がある。これに対し、日本における動物の配慮は、「かわいい」情動に基づくものである。この認識の差異は意外と大きい。本書が一貫して、Animal Welfareを「アニマルウェルフェア」とカタカナ表記で通しているところにも、著者なりの配慮や拘りを感じた。2013/11/20
コウみん
1
本格的な動物倫理学。 科学の発達より動物の福祉はどうなるか。 畜産系の内容だが、結構面白かった。 世界各国での動物の倫理はそれぞれ違う。 実際に閉じ込まれて飼っている鶏の卵より自然の中で放して放している鶏の卵が新鮮で美味しいみたいに人間と動物がお互いに助け合って生きるのが大事だと思う。2022/09/25