出版社内容情報
異なる見解をもつ規範理論の討議を通じて、福祉国家を支える規範とそれを実現する社会保障システムのあるべき姿を探る。
内容説明
社会保障を中核とする福祉国家・福祉社会の「制度」と「理念」はどうあり、どうあるべきか。ロールズ、セン、ドゥオーキン、ノージック、ハイエクなどの規範理論の対立的構図を乗り越え、福祉国家システム像の再構築をめざす。
目次
社会保障論の公共哲学的考察―その歴史的・現代的展望
二つの「方法論争」と福祉国家―経済学と倫理学との思想史的接点
ロールズの正義論と福祉国家
ロールズにおける「福祉国家」と「財産所有制民主主義」
センの潜在能力アプローチと福祉国家システムの構想
ハイエクと社会福祉
ロナルド・ドゥオーキンの倫理的責任論
リバタリアンが福祉国家を批判する理由
分配論の構図
福祉にとっての平等理論―責任‐平等主義批判
福祉国家の改革原理―生産主義から脱生産主義へ
就労・福祉・ワークフェア―福祉国家再編をめぐる新しい対立軸
福祉国家とケアの倫理―正義の彼方へ
正義とケア―ポジション配慮的“公共的ルール”の構築に向けて
著者等紹介
塩野谷祐一[シオノヤユウイチ]
1932年生れ。一橋大学名誉教授。経済哲学専攻
鈴村興太郎[スズムラコウタロウ]
1944年生れ。一橋大学経済研究所教授。厚生経済学専攻
後藤玲子[ゴトウレイコ]
1958年生れ。国立社会保障・人口問題研究所室長/立命館大学大学院教授。経済哲学専攻
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまやま
11
福祉公共哲学を考えるという、かなり古い本ですが、現在でも通じる議論が多いです。ロールズ、セン、ドゥオーキン、ハイエク、ノージックなど政治経済哲学論者のまとめも理解しやすく、勉強になりました。福祉政策に関して強力な批判者であるリバタリアンも最小限の福祉は容認しないと社会が安定しないことは同意されているようです。福祉手段として強権より善意が望ましいとするのは、現実には逃げ口上に聞こえる場合も多いでしょう。自由や公平などの考え方が違うと思います。また、平和な社会だから、福祉が追求できることも改めて感じました。2022/08/22
ミツキ
3
私が考える、福祉を必然的に要請する原理は二つ。人間の固有性と人生の一回性である。さらに言えば、その根底にあるのは人がつねにすでに世界へ投げ入れられていることである。私たちはけっして、生まれる世界を選ぶことも決めることもできない。そこに平等も自由もありはしない。まったき不平等であり不自由である。私は平等とは選べることであり、自由とは決められることであると考えており、二者が対立するという論争には違和感がある。私は福祉を、存在的に不可避の根底的不平等と不自由への、人であるがゆえの挑戦として捉える。2014/12/28
WK
1
こっち先に読めばよかったかも2015/10/16