出版社内容情報
1998年から始まる民主化以降もなお残るインドネシアの非自由主義的な性質の解明に向け、スハルト体制が強固に作り上げた統治理念(「パンチャシラ」(=5つの国家原理))を明らかにし、一貫して窺える暴力の実態に迫る。未解明とされる過去の惨事の詳細な分析を通じて、現在のインドネシア政治との連続性を浮き彫りにする。
目次
第1章 無法の暴力が支える調和
第2章 パンチャシラ―変動する体制、変わらない国家原則
第3章 九・三〇事件
第4章 タンジュンプリオク事件
第5章 「謎の銃殺」事件
第6章 一九九八年五月暴動―体制崩壊と残された分断
終章 統治理念と暴力
著者等紹介
今村祥子[イマムラサチコ]
1971年神奈川県に生まれる。現在、京都大学東南アジア地域研究研究所連携講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
18
独立後のインドネシアの国家と社会の関係を、民衆の暴力の扇動・動員といった枠組みで考察している。本書を読んで、近年のインドネシアにおける暴力事件の凄まじさに改めて驚愕した(特に謎の銃殺事件)。と、同時に、国家がいかに社会と一体化して「われわれ」となり、ともに「われわれ」の敵を攻撃しているかのような構図が見えてきた。スカルノもスハルトも、リベラル・デモクラシーは明確に否定していた。この流れは現在のプラボウォも同様。プラボウォの手も真っ赤な血で穢れているように見える。2024/11/17