出版社内容情報
人類史に長く存在した奴隷に対して,廃止の動きがなぜ,18世紀の後半から世界的に急速に動き出したのか.イギリス,アメリカ,タイ,オスマン朝,そして日本を比較し,グローバルヒストリーとして奴隷制,その廃止をめぐる動きをとらえ,現代において解決すべき課題に迫る.
内容説明
なぜ18世紀末から急速に奴隷制と奴隷交易は廃止されていったのか。そして、「解放」された人びとにいかなる「自由」をもたらしたのか。世界的共通体験となった奴隷廃止から現代に残された課題と向きあう。
目次
序章 奴隷廃止という世界史的共通体験
第1章 新大陸と啓蒙の時代
第2章 環大西洋奴隷廃止ネットワーク
第3章 大いなる矛盾―一九世紀前半の大西洋とインド洋西海域
第4章 グローバル/ローカルなポリティクスとしての奴隷廃止―あるいは手段化する奴隷廃止
第5章 解放しない人びと、解放されない人びと、新たに加わる人びと
終章 奴隷廃止は人類に何をもたらしたのだろうか?
著者等紹介
鈴木英明[スズキヒデアキ]
1978年生。2001年学習院大学文学部史学科卒業。2003年慶應義塾大学大学院文学研究科・東洋史学分野修士課程修了。2010年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。2014年長崎大学多文化社会学部准教授。2018年国立民族学博物館グローバル現象研究部助教。現在、国立民族学博物館グローバル現象研究部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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犬養三千代
6
「奴隷」?新大陸発見そして大西洋奴隷交易から始まり、現代まで続くその歴史を紐解く。アフリカの港からヨーロッパへ新大陸へと。日本も例外ではない。娼妓、芸妓という存在。また然り、奴隷だ。現在アメリカでのBLM(ブラック・ライブズ・マター)の運動へと繋がる。アフリカを植民地化したヨーロッパへの補償要求はどうなるのかな?日本への韓国の要求も然り。人権のない時代を今が裁く。2021/02/04
oDaDa
3
クエイカー教徒が何故奴隷制廃止運動に邁進していくのか。宗教的迫害と奴隷制とを対置させるレトリック。 そもそも、なぜ奴隷として徴用されたのがアフリカ黒人だったのか。ブラジル産サトウキビのヨーロッパにおけるシェア率。こうした長年の個人的な疑問を、グローバルヒストリーというマクロな視座をもってして鮮やかに答えていく、読み応えが有りつつも非常に読みやすい名著だと思う。一概に「多様性」を声高に叫べるようになった現代までの道のりは、歴史的に見れば苦難の連続に満ち満ちている。歴史を学ぶ意味さえ考えさせられる。2022/09/12