出版社内容情報
日本民衆の全てを巻き込み,三百万以上の日本人を殺し,その何倍ものアジアの民衆に犠牲を強いた「アジア太平洋戦争」--多くの日本人は,熱心にこの戦争を支え,そして幾多の深淵を見た.今,民衆は語り始める.あの戦争は,私たちにとって一体何だったのか.
内容説明
310万の日本人が死に、その何倍ものアジアの民衆に犠牲を強いた〈戦争〉…、敗戦後42年目の夏、いま多くの日本人が、自らの体験をとおして語りかける。あの戦争は、わたしたちにとって、一体、何だったのか、と。
目次
第1章 デモクラシーからファシズムへ(戦争への不安と期待;民衆の戦争;中国の戦場で)
第2章 草の根のファシズム(ファシズムの根もと;民衆の序列)
第3章 アジアの戦争(インドネシアの幻影;ビルマの流星群;フィリピンの山野で;再び中国戦線で)
第4章 戦場からのデモクラシー(ひび割れるファシズム;国家の崩壊を越えて)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
30
日本の侵略戦争で、アジアで2000万人、日本人でも310万人が犠牲となった。この侵略戦争に対して民衆はどのように関わったのか、多くの体験資料から考察されている。天皇制ファシズムを支えるためには、言論統制下であっても民衆の何かしらの支持がなければ難しいだろう。積極的、消極的の両面があったにせよ、同じ過ちを繰り返さないために、多くの学ぶ点があったように思った。2020/02/27
ステビア
23
敗戦後も残存した「帝国」「聖戦」意識2022/04/03
印度 洋一郎
5
庶民の戦争体験をリアルタイムでの手記や戦後の回想録に取材し、いわゆる天皇制ファシズムを支持し、協力し、積極的に戦争を遂行した人々の生々しい声を分析する。「悲惨な犠牲者」ではあるが、同時に戦争が勝利した暁にはいい暮らしが出来ると期待し、侵攻した先で中国人や東南アジア人と温かく交流するかと思えば、容赦無く処刑、暴行、略奪をする。恐らく、この多面性が人間の本質なのだろうが、ファシズムはやはり大衆の支持あってこその体制だというのがわかる。戦前の農村は軍隊よりも生活水準が低く、徴兵はそんな暮らしからの解放でもあった2014/07/02
Pyonkichi
2
日本の民衆にとっての戦争体験とは何だったのか、70年代以降に多数刊行された体験記を素材に検証した本。戦場での残虐行為や「徴発」と呼ばれる略奪行為の実態がこれでもかというほどに記される。またその背景にある日本人の周辺諸国の人々に対する根深い差別意識や、「同胞が血を流して得た土地を失うことができない」という帝国意識の根深さには慄然とさせられる。一方で一人一人のライフヒストリーを掘り下げ、そうした意識の生じる過程を丁寧に追う叙述には、戦争を体験した個々人に対する、著者の深い敬意が感じられる。2022/05/09
富士さん
1
めちゃくちゃ気分の重くなる本です。読めば読むほど当事者意識を感じ、他人事とは言えなくなります。登場人物たちの無反省や開き直りは、自分が生きるために必要としている救いであると同時に、自分を行きづらくしている世間からの圧迫以外の何ものでもないのです。この世界で生きようと思うなら、どちらを批判することも出来ない。揺るがぬ正義があればどれほど楽かと思います。ただ思うのは、「戦いは一発の弾丸に始まり、最後に一人の女に終わる」。我意を大義で糊塗する醜い懐旧家の曰う“古き良き日本人”には断固なるまい。2013/01/20