出版社内容情報
1930年代の官製国民運動としての農村経済更生運動の研究を通じて,戦時下の農村支配体制はどのように再編されていったのかという課題を明らかにし,さらに農地改革等を経て,戦後に農協を中心としたシステムに再編成され受け継がれていく歴史的過程を実証的に分析する.
目次
序章 課題と方法
第1章 日本ファシズムの形成と農村経済更生運動
第2章 戦時下農民諸階層の対抗と再編
第3章 日本ファシズムと農村協同組合
第4章 農村経済更生特別助成事業の展開
第5章 農村経済更生運動と翼賛体制
第6章 昭和恐慌下の農村再編
第7章 戦時下農村の構造変化
第8章 戦時体制と農村―系統農会の歴史的性格
第9章 戦後改革と農村社会―その連続と断絶
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Naoya Sugitani
2
きわめてカロリーの高い本。読むのに体力がいる。が、農村社会からいかにファシズムが形成されていったかを描くこの姿勢を、その後の農村社会史研究は継承できているだろうか。森氏の姿勢からは、農村という日本社会の末端から日本国家の本質を暴こうとする姿勢がみられる。ファシズム論争でも、こうした視点は結局今日まで顧みられることはなかったように思う。この時代の研究者特有の問題意識は、今後も色あせることなく残り続けるだろう。研究者もまた、この問題意識をしっかりと継承しつないでいかなければならないはずだ。2018/01/09