出版社内容情報
いまや政治に“まつりごと”の面影なく,世界は一つの意味として,“書物”として読み解かれることをやめる.語源説,精神分析そして現象学の手法を駆使して,仮面と鬼面のたわむれの方向へ新たな言語思想をめざす著者の第一作が蘇る.【解題/熊野純彦】
「…ここには,西欧語による思考をじゅうぶんに潜りぬけ,理性の言語をたどったその果てに,この国のことばにあくまで寄りそい,つきしたがいながら,現実の可能性を枠どる「夢」がそこをめぐって到来する「通い路」をもとめて,一箇の普遍的な思考を築きあげようとするこころみがある.そこでは,文体それ自体こそがひとつの思想なのである.」(熊野純彦「解題」より)
目次
1 「おもて」の解釈学試論(「おもて」の境位;「かげ」についての素描;あらわれとCopula)
2 仮面の論理と倫理にむけて(仮面と人格;固有名詞と仮面のあいだ)
3 日本語の思考の未来のために―欧米語と日本語の論理と思考
4 しるし・うつし身・ことだま(しるし;うつし身;ことだま―富士谷御杖の言霊論一面)
著者等紹介
坂部恵[サカベメグミ]
1936年神奈川県に生まれる。1959年東京大学文学部哲学科卒業。1985年東京大学文学部教授。東京大学名誉教授。2009年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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獺祭魚の食客@鯨鯢
61
日本人以外がマスクを毛嫌いするのは単なる自己主張の強さだけではないように思われる。 「人間失格」の大庭葉蔵や「仮面の告白」の私は作者の分身であるが、多くの日本人に読まれるのは同様の疎外感(離人感)を持ち、本心を偽って生きる人間が少なくからだろう。 ハレとケにおいて、ハレ(祭礼、宴会)の場で面を着けるのは匿名性においてのみ「素顔」の自分をさらけ出せる日本人ならでは。コロナ時代においても、目だけで意志疎通できるから、マスク生活でも不自由しないのかもしれない。2020/10/23
内島菫
12
一文が長くどこからどこまでがどこにかかっているのかわかりにくい文章が所々見受けられたが、様々な言葉や世界が関連し合いうつし合う著者の思考の在り方そのものを示しているようだった。「おもて、おもみ、おもひ」や「しるし、しる、しろしめす」のように、共通の響きを持つ言葉は同じものから派生したと考えられるということは、そこに日本人の世界観のルーツがあるということだ。述語のみで文章が成立する日本語の文法も同様に、日本人の精神構造をうつす鏡ともいえる。本書で触れられている思想家のうち、特に富士谷御杖が興味深かった。2015/06/30
魚京童!
9
熊野さんたぶん読んでないね。2015/02/28
Haruka Fukuhara
5
散文詩のような文章に戸惑った。面白いことを含んでいると思う。2017/02/26
らむだ
2
cf.2011/11/22