出版社内容情報
近代中国像は歪んでいないか.戦後の中国研究に視座の転換を迫り,アジアというもうひとつの世界イメージを提起する.国家よりも天下,国民ではなく生民--近代中国の原点に立って“民主化”を見すえ,来たるべきアジアの世紀への予感をはらんだ論争の書.
内容説明
この一世紀余、ヨーロッパという軸・国家という軸をもとに、反発と相剋の上に共存してきた日本と中国は、21世紀に向けて、アジアという軸・民衆という軸・人類という軸をもとにした新しい関係構造の模索に入った。本書は、その模索に向けての、一中国研究者による、戦後の日本の中国観の日本側からの一つの決算である。
目次
1 〈中国の近代〉をみる視点
2 近代中国像の再検討
3 中国における「封建」と近代
4 天下と国家、生民と国民
5 方法としての中国
6 津田シナ学とこれからの中国学
7 フランスシナ学と日本漢学と中国哲学
8 〈儒教ルネサンス〉に際して
9 近代中国像は歪んでいないか―洋務と民権および中体西用と儒教
10 ある反「洋務」―劉錫鴻の場合
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
日暮里の首領様
3
「進んだ日本、遅れた中国」という戦前的な中国観のみならず、「安易に西洋近代に迎合した日本、危機に晒されることで徹底的に変わり抜き、非欧近代を歩む中国」という竹内好的・戦後的中国観も、西洋近代を絶対視する戦前の「裏返し」として批判、「異」としての中国を相対化する方法を提案。洋務運動期にはむしろ「封建」が地方自治と結びつく肯定的な言葉として使われ、それへの批判として孫文・毛沢東の集権的革命思想が出てきた、等々、興味深かった。日本人が中国について考えるということを、相対化・客観視させてくれる快著。2012/12/19
MIRACLE
0
宋明学者である筆者が、中国近現代史の方法について論じた13の論文・エッセイを収録した本。中国思想に関する記述が貴重。一方、本書の後半は、門外漢の私には、退屈な内容だった(公私に関する記述は、前半の一部だけ)。表題の「方法としての中国」とは、西欧の視点、中国の視点でもない、中国をとおして世界を目的とする中国学の意味である(136頁)。「仮説は事実でないため、無視されることはあっても、積極的に否定されることはない」(38頁)。そのため、柄谷行人のような悪書が、良書を駆逐する事態が生じるのか。2017/02/25
かるた
0
世界を方法として中国をみるのではなく、中国を方法として世界に見せることを提唱する、(当時としては)新しい方法論の書。2021/02/17
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