出版社内容情報
統合失調症の概念の起源を、人類の文化史にさかのぼる。精神の病を文化・歴史的な深みで考究する著者一連の著作の原点。全新組。
統合失調症の概念の起源を,人類の文化史にさかのぼる.精神の病を文化・歴史的な深みで考究する著者一連の著作の原点.全新組.
【著者紹介】
中井 久夫
中井久夫:神戸大学名誉教授
目次
第1章 分裂病と人類―予感、不安、願望思考(“先取り”的な構え;狩猟民的な認知特性;農耕社会の強迫症親和性 ほか)
第2章 執着気質の歴史的背景―再建の倫理としての勤勉と工夫(“甘え”の断念;再建の仕法家―二宮尊徳;立て直しと世直し ほか)
第3章 西欧精神医学背景史(古代ギリシア;ギリシア治療文化の変貌;ヘレニズムに向かって ほか)
著者等紹介
中井久夫[ナカイヒサオ]
1934年奈良県に生れる。1959年京都大学医学部医学科卒業。1980年神戸大学医学部精神神経科教授。1995年兵庫県こころのケアセンター長。1997年甲南大学文学部臨床心理学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ベイス
61
「100分で名著」で中井久夫に初めて触れ、興味をもち購読。入門に最適、と番組で紹介されていたが、氏の思考の「飛躍」に幾度も面食らう事態に・・・それでも世界史を「分裂病」との関係で読み直すという大胆な試みは新鮮で(もう40年も前に書かれた本だけど!)刺激的だった。世界は進化すればするほど「うつ病を発症しやすい」執着気質型社会へと突き進んでいるが、このことと分裂病(いまでいう統合失調症)予備軍たる「S親和者」との関係がどうしても分からなかった。章ごとの関連をもう少し明確に「編集」してほしい・・・2023/01/02
燃えつきた棒
36
NHK「100分de名著」の「中井久夫スペシャル」で紹介されていた本。これは面白い!ページを繰る度に心に残る言葉に出会う。 本を同時に何冊も並行して読んでしまう悪癖のある僕(ちなみに現在、読みかけ本が39冊。)も、これだけ面白けりゃ集中して読むことができる。/ 【青年期に一過性に分裂病状態を経験した人の数は予想以上に多数ではあるまいか。】 ここではヴィトゲンシュタインらを挙げているが、たしか、番組では斎藤環が中井先生自身も若い頃に同じような状態に陥ったことがあると指摘していたように思う。/2023/06/27
しゅん
12
分裂症と人類史の関わりが中心かと思ったら、3章の精神医学背景史に多くが割かれてた。面白かったのは2章の粘着気質と鬱の歴史的背景。日本人の職業気質は「立て直す」ことに向かっており、新しいものを作るタイプではない。悔やみ、後悔の強さが執着になり、そこから禁欲と工夫の教えが出るが、工夫が空転すると鬱に変わる。日本におけるパラノイアな倫理観を二宮尊徳の考察から浮かび上がらせる。2021/11/17
OjohmbonX
9
分裂気質の特徴を電気回路の微分回路と対比し、執着気質が日本社会で倫理的とされていく起源を二宮尊徳の生涯から描き出し、西欧の精神医学が主流に見えて異端であることを魔女狩りといった現象の分析を交えて明らかにする。何をどうしたらこんな縦横無尽に書けるんだと思いながら読んでたら、後書きで「これらの著作や論文から課題や疑問を得てこういう探求の方向になった」と種明かしされるけど、高度なマジックはいっそ「魔法です。」とでも言われた方がまだ納得できるみたいな気持ちになる。2018/01/21
toiwata
6
これもまたページ数が圧縮された歴史書。第三章 西欧精神医学背景史の底本はみすずライブラリーの同名の書籍と同じなので、この章については実質、再読。「つけ加えるべきものはあっても、消去すべきところはない」p.255 自著を読み返して過誤は無いと言い切る重さ。2016/02/10
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