出版社内容情報
近代知を〈内破〉し,蠢動し,胎動する新たな知の姿.政治,社会,思想,教育,文学,メディアの研究者が,自らの足下の学問や知の制度を問いなおし,苦闘し,越境する知の地平を拓く.「シリーズ越境する知」(全6巻,7月上旬刊行開始)のプレリュード.
内容説明
近代の知を“内破”し、蠢動し、胎動しつつある新たな知の姿。政治、社会、教育、思想、メディアの研究者が、みずからの学問を問いなおし、苦闘し、知の境界線を越境する。
目次
水俣病という身体―風景のざわめきの政治学
交響する学びの公共圏―身体の記憶から近代の脱構築へ
起源の言説―「日本近代文学研究」という装置
メディアを語る言説―両大戦間期における新聞学の誕生
座談「挑戦するダイアローグ」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
寛生
39
【図書館】知の商品化と大学の市場化の荒波の中、他者に開かれていく身体と言葉、越境していく知を4人の知識人が問う。それは「身体の知」というよりは〈知の身体〉を探求しているのであり、その「創造している知」が現実社会の声といかに共感し、身体の鼓動と切り結んでいるかだ。体系や制度があるかのような知の世界に割れ目や裂け目をあえて見いだし、そこから湧き出てくる声にこの知識人たちは自らの耳をすましていく。そこでは注意深い自らの傾倒によって沈黙を聞き取ることになる。そのとき、目の前になった境界線や自らの知が内破していく。2014/10/29
chanvesa
1
出版された時に読んだ13年前は面白く読んだ記憶がある。インターネット、9.11、3.11によって、世界と日本の変化は、この13年間で、この本の議論を古くさくさせている。水俣病の問題だけが、普遍的だ。特に福島第一原発事故の問題は、水俣と同じ根にある気がする。その他の問題は、システムを内破させる前に、システムが崩壊してしまったとしか思えない。教育、出版、新聞は昔日の栄光(幻影の栄光であったとしても)を回想するのみである。巻末の座談ものんきな感じがする。2013/04/15
澄川石狩掾
0
本書収録の、小森陽一「起源の言説―「日本近代文学研究」という装置」に興味があったので読んだ。特定の作家のテクストを「日本文学」として研究しことほいでいるとされる「日本近代文学研究」という解釈共同体を批判的に捉えているが、近年の小森氏の弟子筋の人々の博論本を読んでいると、彼もまた自身が批判するところの解釈共同体を再生産しているのではないか、と思う。2022/01/15