出版社内容情報
馴染客を若い後輩に奪われそうになった割烹料理屋の女(表題作)。報われぬまま夭折した画家である夫に脚光が浴びることを願う妻(「紙碑」)。岐路や窮地に立った時、彼女たちがとった行動は……。名手・清張の腕が冴えわたる! 初文庫化など清張の珍しい短篇をテーマ別に精選した、文庫オリジナル作品集。〈解説〉横田創
【目次】
内容説明
馴染客と新入りの仲を疑う、割烹料理屋の女(表題作)。報われぬまま夭折した画家の夫が、新しい美術辞典で取り上げられることを願う妻(「紙碑」)。人生の岐路や窮地に立った時、彼女たちがとった行動は…。女たちの運命を描いて、名手・清張の腕が冴えわたる!初文庫化作品を含む文庫オリジナル短篇集。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909年、福岡県小倉(現北九州市)に生まれる。51年、《週刊朝日》主催の〈百万人の小説〉で「西郷札」が三等に入選。53年「或る『小倉日記』伝」で第二八回芥川賞を受賞。55年、短篇「張込み」で推理小説に進出。58年に刊行した初の推理長篇『点と線』は大ベストセラーになり、一大推理小説ブームを引き起こす立役者のひとりとなった。70年『昭和史発掘』で第一八回菊池寛賞、90年朝日賞受賞。92年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
54
表題作に舌を巻く。相手の好意を転がしてきた女性。なのに自分より、若い女を気に掛けると急に惜しくなったりする気持ちやそれが生まれる理由が30代半ばももうじきになった今ではストンと腑に落ちる。だからこそ、最後の言葉に泣き笑い状態になってしまった。しかもそれがそんな価値もない男だと理解した後だから猶更ね。「結婚式」もおめでたい結婚式を純粋に祝えなくなった男の話。何故、そう思うようになったのかの語り口が巧すぎてぐいぐい、引き込まれてしまった。それにしても余りにも寛容且つ出来過ぎていて奥さんが怖いと思ってしまった。2026/09/12
くるぶしふくらはぎ
17
「文庫本は字が小さくて」と敬遠している諸氏も安心のフォントサイズです。女性をテーマにしたオリジナル短編集。古い作品は1956年のものもあり、年代的には広く収録されています。社会の情勢や価値観、登場人物の持ち物には時代を感じますが、人の情念や”こすっからしさ”や冷徹さは色褪せない。人間の嫌な面が溢れた作品ではあるのだけど、ああ〜面白かったあ〜と、しみじみと吐息を吐くような読後感でした。2026/10/06
雲國斎
16
清張の短編集。全7編。女性をメインにすえた作品集で、ミステリー色はないが、楽しめた。読んでないもののほうが多かったかな。なかでも「黒い血の女」が強烈そのもので、金への執着はげに恐ろしという話。昭和の頃なら2時間ドラマになりそうだが…。「紙碑」もいい。いかにも清張って感じの結末だった。やっぱり清張はおもしろい!2026/09/20
Inzaghico (Etsuko Oshita)
11
それぞれの悪女(そこまでいかない女性も含め)の人間性が読み物としての面白さをぐんと上げている。 ちょっと長めの「黒い血の女」なんぞ、中心人物の悪女は自分の私利私欲に男を使って人を殺すことも厭わないのに、捕まって死刑判決が下ると、寝たきりの夫には何も知らせてくれるな、と嘆願した。善人である夫には自分の本性を知られたくないという、なんとも可愛げのあるところを見せる。こういうグラデーションというかムラというか凹凸があるところが、人間であり、清張はこういう人間の描き方に秀でている、といつも思う。2026/08/13
マヌヌ2号
6
まずもって、リーダビリティが抜群なので、読みながら詰まるということはほとんどない。それでいて、情景描写は緻密であり、旅情を煽るようなところがある。人物造形は一見すると類型的で、たとえば「黒い血の女」のリウなんかは表面だけなぞると俗な悪女だなぁと感じる。しかしこのリウにも、やたらと家財に執着するところや夫に犯行を隠そうとするところなど、画一的な人物として読み取りづらい一面がある。収録短篇に共通するのは、人間を掴んだと思った途端に、想定していた人物像が指の先からすり抜けて消えていくような、不思議な余韻だろう2026/10/22




