出版社内容情報
男の中にある女。女の中にある男。一瞬、魔的な影がよぎる――
歌舞伎において女性の役あるいはそれを勤める役者を指す「女方」。世界中の演劇でも稀なこの女方を題材にとった小説を「女方小説」と名づけて蒐めた初めての試み。網野菊「おもかげ」「楽屋」、三島由紀夫「女方」、円地文子「双面」「女形一代――七世瀬川菊之丞伝――」を収録。文庫オリジナル。〈解説〉中村哲郎
【目次】
内容説明
歌舞伎において、女性の役あるいはそれを勤める役者を指す「女方」。世界中の演劇でも稀なこの女方を題材にとった小説を「女方小説」と名づけて蒐めた初めての試み。網野菊「おもかげ」「楽屋」、三島由紀夫「女方」、円地文子「双面」「女形一代―七世瀬川菊之丞伝―」を収録。文庫オリジナル。
著者等紹介
中村哲郎[ナカムラテツロウ]
1942年生まれ。評論家。演劇関係の著作が多い。『西洋人の歌舞伎発見』(芸術選奨新人賞)、『歌舞伎の近代』(河竹賞)、『花とフォルムと』(芸術選奨文部科学大臣賞)、『勘三郎の死』(読売文学賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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迦陵頻之急
2
女方小説という大層ニッチなテーマのアンソロジー。丁度、女方の生涯を描いた小説とその映画化が話題というタイミングだが、便乗企画と見るには編者も執筆者も只者ではない。何より本書、昭和歌舞伎女方小説集と銘打ちつつ、その実態は六代目中村歌右衛門をモデルとした小説集に他ならない。網野菊、三島由紀夫、円地文子による最初の三篇は若々しい全盛期の輝きが描かれ、円地文子の絶筆となる最後の「女形一代」は老境を迎えて振り返る凄惨な半生を刻み込む。スキャンダラスな幻の作だった円地の本作、今回ついに文庫で手軽に読めるようになった。2025/06/29
石橋
1
映画「国宝」を観た帰りに原作と一緒にこちらも手に取る。タロー書房の戦略お見事。なんだか、ついこの間観たし!読んだし!というくだりが多かった。2025/08/17
絶間之助
0
網野菊、三島由紀夫、円地文子の「女方」を題材にした短編小説集。歌舞伎に親しんだ体験から、女方という男でもなく女でもない、異質の役者の心情を描く。歌舞伎界の内情も織り込んで、歌舞伎ファンの私としては実に興味深い小説集でした。編者の解説によれば、いずれも六世歌右衛門と親交があり、思い浮かべて書いたのだろうと。私は晩年の歌右衛門を見ているので、さらに思いがつのるのでした。ああ、面白かった!2025/08/17