出版社内容情報
学生時代はボランティアサークルに所属し、国内外で活動しながら、ある出来事で心に深傷を負い、無気力な中年になったみのり。不登校の甥とともに、戦争で片足を失った祖父の秘密や、祖父と繋がるパラ陸上選手を追ううちに、みのりの心は予想外の道へと走りはじめる。あきらめた人生に使命〈タラント〉が宿る、慟哭の長篇小説。
解説・奈倉有里
内容説明
学生時代はボランティアサークルに所属し、国内外で活動しながら、ある出来事で心に深傷を負い、無気力な中年になったみのり。不登校の甥とともに、戦争で片足を失った祖父の秘密や、祖父と繋がるパラ陸上選手を追ううちに、みのりの心は予想外の道へと走りはじめる。あきらめた人生に使命“タラント”が宿る、慟哭の長篇小説。
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年「幸福な遊戯」でデビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞、07年『八日目の〓』で中央公論文芸賞、11年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、12年には『かなたの子』で泉鏡花文学賞及び『紙の月』で柴田錬三郎賞を、14年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞、21年『源氏物語』の完全新訳で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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piro
38
「人は、善意にはぜったいに善意を返すものだと、意識することもないくらい強く信じていたのだ。」それが必ずしも正しくないことを知った時のみのりの戸惑いが心に刺さる。そして、祖父・清美の過去と彼の秘めた思いが謎解きの様に明らかになるに連れ、みのりの心も少しずつ氷解していくさまに静かな喜びを感じました。時折挟まれるもう一つの時系列、祖父の清美と思われる視点で語られる戦中から戦後のお話の結末を知った時には更なる喜びが…。パラアスリートの涼花の跳躍の様に、みのりももう一段高く跳べる予感がします。2024/11/02
ココ
22
紛争や難民、手に負えない問題との係わりの中で、傷つく主人公やその友達たちの心情が丁寧に描かれていく。時代を行ったり来たり、若き頃の祖父の体験を挟みながら、構成が良かった。作者の熱量を感じた。2025/04/03
yunyon
22
私が好きな言葉「やらぬ善よりやる偽善」、24時間テレビの今年のやす子さんのマラソンもそうだけど、四の五の言って、何にもやらない人より、自分が動いて何かをする人の方がいい。それぞれの使命がある。2024/09/30
NAOAMI
16
ボランティア、海外支援等の「善いこと」してる感、使命感ある?偽善?それを個人でまともに消化しようと思うと、そういった活動している人も色々迷ったりするのだな。紛争や貧困、教育を受けられない子供。1週間ばかり手を差し伸べたからって何?そんなモヤモヤ軸の他に、みのりの祖父視点で戦前~今が各章〆に挿入、彼が元アスリートで現役選手との交流もという軸。彼の内面を読むうちに終盤仄めかされる別の書き手が浮上。9・11、3・11、コロナ他、幾つもの心折れを経てみのりが漸く浮上する終盤はホッとするが、全般手広すぎ散漫な印象。2024/09/23
NakaTaka
14
主人公みのりを軸に、祖父と甥との関わりを描く。それぞれの挫折とそこからの復活?東日本大震災やコロナ禍や。途中で辛くなり読むのをやめようかと思ったが、読んで良かった。みのりは、良い旦那さんに出会って良かった。2024/10/20