内容説明
十九世紀、「シャーロック・ホームズ」シリーズでヴィクトリア朝ロンドンの人々を魅了した稀代の探偵小説家コナン・ドイル。その幻のデビュー作「ササッサ谷の怪」(一八七九年)から、最後の小説「最後の手段」(一九三〇年)まで、知られざる名短篇十四作を収録。
著者等紹介
ドイル,コナン[ドイル,コナン] [Doyle,Conan]
1859年生まれ。イギリスの医師、作家。87年『緋色の研究』を皮切りとした探偵小説「シャーロック・ホームズ」シリーズで世に知られる。1930年没
小池滋[コイケシゲル]
1931年、東京生まれ。英文学者、翻訳家、鉄道史研究家。東京都立大学名誉教授。ディケンズをはじめとした十九世紀英文学を専門とした。80年に『英国鉄道物語』で毎日出版文化賞を受賞。2023年没
北原尚彦[キタハラナオヒコ]
1962年生まれ。青山学院大学理工学部物理学科卒。作家、翻訳家、ホームズ研究家。日本推理作家協会会員。日本古典SF研究会会長。日本SF作家クラブ会員。90年『ホームズ君は恋探偵』(北原なおみ名義)で小説家デビュー。2015年、小説『シャーロック・ホームズの蒐集』で日本推理作家協会賞候補。19年に編著作『シャーロック・ホームズの古典事件帖』で日本シャーロック・ホームズ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
75
コナン・ドイルの短編小説をデビュー作「ササッサ谷の怪」から最後の小説「最後の手段」までの14作収録。各短編はページ数短めだが内容が濃く読みでがあった。珍妙な作品が多いのが面白味のある作品集で、印象に残るのが「幽霊選び-ゴアズソープ屋敷の幽霊」。幽霊を欲しがる男にまつわる話で、出てくる登場人物らがやたら胡散臭く展開も怪しげなので妙に可笑しい。海洋小説「エヴァンジェリン号の運命」も好き。その他法螺話や架空戦記SF、犯罪小説ややはりミステリ的なものもありで、ホームズもの以外でのドイルの作風の幅広さを堪能できた。2024/08/06
えーた
39
あまりにも高名な代表作・シャーロック・ホームズ・シリーズゆえに、そのネームバリューの割に知られていない作品が意外と多いコナン・ドイルの珍しい佳品が収められた素敵な一品。ユーモア作品や怪異譚から架空戦記物までとにかく多種多様なジャンルが揃っている(しかもどれも面白い)のに加えて、作者のデヴュー作(「ササッサ谷の怪」)と生前最後の作品(「最後の手段」)が収録されていることからも、非常に興味深く、よく選り抜かれた一冊だと思う。とりわけWW1における英と独の海戦を描いた「死の航海」は大変読み応えがあって良かった。2024/07/01
Mark
33
コナン・ドイルが「シャーロック・ホームズ」シリーズで名が売れる前のデビュー作から、最晩年までの作品を数点集めた短編集です。翻訳にもリズムがあり、大変読み進めやすく、日本ではあまりなじみのない情景や背景も生き生きとイメージできる作品が多いという印象でした。サスペンス的な物語は、流石と思わせるものばかりですが、ドイルが医者だったことが、ホームズのサイドキックスであるワトソン医師につながっているということを、巻末の解説で知りました。ドイルの短編は、他にも多く紹介されているので、読みたいと思います。2024/10/05
ニミッツクラス
32
24年(令和6年)の税抜900円の中公文庫初版。同社C★NOVELSの「コナン・ドイル未紹介作品集1~3」(全33話)から編者北原氏が14話を抽出して文庫化。ドイル20歳のデビュー作から没年(71歳)までのノンシリーズ奇譚を初出順に並べた。「死の航海」はif戦記物で、史実では第一次大戦末期に独皇帝はオランダへ逃れたが、本作では皇帝自ら旗艦に座乗し、英米の連合艦隊と片道特攻の艦隊決戦を行う。没後出版の「最後の手段」は禁断の○○落ちだが、少なくとも晩年の霊界方向へのネジのゆるみは無いから読める。★★★★☆☆2025/04/08
翠埜もぐら
29
ドイルはホームズものだけでなく「海洋奇譚編」とか「クルンバーの謎」とかも読んでいたのですが、デビュー作をはじめほぼ初読の物ばかりで楽しかったです。思わずニヤッとしてしまったのは「幽霊選び-ゴアズソープ屋敷の幽霊」。この頃からすでに英国の古いお屋敷には幽霊は権威的必需品だったのね。「辻馬車屋の話」はちょっとホームズ物のかほりが・・どの話も結構エキセントリックなところがあるのにまとまっていて読み易かったし、「死の航海」のように当時の事実をIF話にしてみるのって「歴史小説家ドイル」の片鱗が見えて面白かったです。2024/06/30