出版社内容情報
互いに愛人がいながら離婚にふみきれない中年夫婦の、一見おだやかな日常を古典への愛をとりまぜて描いた傑作。小出楢重の挿絵八十余点を完全収載。
〈解説〉千葉俊二〈註解〉明里千章
愛することは出来ない
までも慰(なぐさ)み物には
しなかつたつもりだ
内容説明
「愛することは出来ないまでも慰み物にはしなかつたつもりだ」「あたしは、慰み物にされてゞももつと愛されたかつたんです」互いに愛人がいながら離婚にふみきれない中年夫婦の、一見おだやかな日常を古典への愛をとりまぜて描いた傑作。小出楢重の挿絵八十余点を完全収載。
著者等紹介
谷崎潤一郎[タニザキジュンイチロウ]
明治19年(1886)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治43年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
みつ
22
そえぞれに愛人を持ちながら「もし友達であつたなら却つて仲よく行つたかも知れない」(p72)と感じる夫婦を軸に、妻の父と若い愛人の古い日本文化を体現した世界を差し挟み、物語は進行する。妻の愛人は遂に登場しないが、主人公の従兄弟との闊達な会話からも関係は想像でき、義父の愛人と対照をなす。主人公が旅先で文楽の舞台を観た後外国人の愛人のもとを訪れるなど、日本的なものと西洋的なものの対比は幾度となく繰り返される。島における排泄物の処理や暗く汚れた風呂なども看過することなく描かれ、『陰翳礼讃』の世界にも直結する。➡️2024/10/31
荒野の狼
8
谷崎潤一郎とその妻・千代と佐藤春夫の三角関係については、その新事実が、瀬戸内寂聴の「つれなかりせばなかなかに 妻をめぐる文豪と詩人の恋の葛藤」で明らかにされている(なお、同書p69によれば、寂聴の本の出版前に、谷崎の末弟により、もう一人の男の存在があった新事実は発表されていたが無視されていた)。私は同書の読後に、「蓼喰う虫」を読了した。2025/09/12
モジモジアニキ🏳️🌈🏳️⚧️🍉
3
女性崇拝者というのは究極のエゴイストという事実に気づいてそうな主人公の造形から、ここまで自己を小説に落とし込める著者の客観力の高さに慄く。妾という不思議な立場を過不足なくこなすお久さんが自己表現シーンゼロなのに凄く目立ってたのが面白かった。2024/07/19
chuji
3
久喜市立中央図書館の本。2024年5月初版。初出「大阪毎日新聞・東京日日新聞」1928年12月~29年6月。百年近く前の著作でした。2024/06/28
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