出版社内容情報
元式部丞・藤原為時の娘で二十歳の小姫(のちの紫式部)は、創作の腕を評価され、左大臣源雅信の娘・倫子に「物語の女房」として仕えていた。小姫の書いた「光る君」を主人公とする短編は、貴族社会の一部で評判を取り、回し読みされている。倫子の要望に従い次々と執筆しているうちに創作の「種」に詰まってしまった小姫は、ある日、隣家の中流貴族の娘で幼馴染みの月乃に「取材」へ誘われる。女房たちの間で噂になっている七の宮の恋の真相を知るため、宮が女と逢瀬を重ねているという廃院に行ってみようというのだ。月乃の父の荘園を治める荘官の子・鶴丸を供に、廃院に向かった三人だったが……。
【目次】
第一話 六条の廃院
第二話 尋ねゆく幻術士
第三話 あこがれの草子
第四話 車争い
第五話 鳴滝参り
内容説明
元武部丞藤原為時を父に持つ小姫(のちの紫式部)は、「物語の女房」として左大臣源雅信の娘・倫子に仕え、「光る君」を主人公とする短編が評判になりつつある。倫子の要望で次々と執筆するうちに創作の「種」に詰まった小姫は、幼馴染みの月乃に「取材」へ誘われ…。若き日の紫式部が、相棒とともに都大路の「謎」に迫る!
著者等紹介
夏山かほる[ナツヤマカオル]
佐賀県生まれ。福岡女子大学文学部卒業、九州大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。第一一回日経小説大賞を受賞した『新・紫式部日記』で、2020年にデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のびすけ
26
土御門の倫子さまに物語の女房として仕える小姫。お隣さんで仲良しの月乃と二人でさまざまな謎を追う連作短編。怪しい陰陽師、花山院の秘匿された姫宮、巷に出回る小姫の偽作品、蜻蛉の方への嫌がらせなど、平安版の日常ミステリーをさらりと楽しみました。2024/06/16
maekoo
6
前二作と違い、若き日の紫式部が様々な事件からその創作の種を見出す「光る君の物語」創作活動と、都で起る謎解きを仲間達と探求し爽快に解決して行く痛快な短編集! 車争い等々源氏物語のエピソードを巧くこの物語に絡めながら様々な事件を解決していく! 平安時代の習俗や宮廷模様も描きつつ、蜻蛉日記の道綱母等実際の歴史上の人物も登場させ源氏物語創作の糸口をつかんでいくのが面白い! 短編を創作した後に桐壺を起こしたと言う後作論を根幹として物語が進み、何故そうなって行ったかをフィクションとして膨らませた形で愉しめる平安絵巻!2024/10/28
鳩羽
4
小姫は、「光る君」を主人公にした短編物語を献上し、源雅信の娘倫子に物語の女房として仕えている。物語のネタに困り、執筆が滞ると、幼馴染の月乃に誘われ、様々な事件に首を突っ込むが…。貴公子七宮に関する噂、花山院の姫宮、あやしげな陰陽師など、平安の貴族社会に起きた事件を、貴族としては中流の受領階級の2人の娘がなんとか解決していく。ミステリというほど謎解きがあるわけでもなく、キャラの立つ男君がいるわけでもないので、平安の貴族社会の雰囲気をゆるゆると味わえる連作集。謙辞という感情は、なるほど確かにと勉強になった。2024/03/18
大福
4
21冊目、ゲラにて読了。 平安時代の女性ってもっと拘束が厳しくて、引きこもらされているイメージがあったけど、この物語は親近感が湧くほどにお転婆さんたち。 すえひろがりのコントみたいな感じで現代に寄せてくれているから、おもしろかった。2024/02/06
ユキタ
3
図書館。長大な源氏物語を書く前に、いくつか短編をものにして評判をとる後の紫式部こと小姫とその幼馴染みの姫月乃が巷の謎を追うミステリ。いつか源氏物語に組み込まれる物事が散りばめられているところは楽しいが、「なんて素敵にジャパネスク」を読んだあとではインパクトに欠けてしまうのが正直なところ。2024/05/09