出版社内容情報
ママがずっとわたしの恥部だった――。
就活に失敗し、逃げるように結婚を選んだ桃嘉。
優しい台湾人の母に祝福されるも、理想だった夫に一つ一つ
〈大切なもの〉をふみにじられていく。
台湾と日本のはざまで母娘の痛みがこだまする長編小説。
織田作之助賞受賞作。
〈解説〉渡邊英理
内容説明
大学卒業後、就職から逃げるように結婚した桃嘉。台湾人の母に祝福されるも、理想だった夫に一つ一つ「大切なもの」をふみにじられていく。子どもの頃の「傷」に気付くとき、母の一生が桃嘉の心を揺らし…。台湾と日本のはざまで母娘の痛みがこだまする、心温まる長篇小説。織田作之助賞受賞作。
著者等紹介
温又柔[オンユウジュウ]
1980年、台湾・台北市生まれ。両親ともに台湾人。幼少期に来日し、東京で成長する。2009年「好去好来歌」ですばる文学賞佳作、16年『台湾生まれ 日本語育ち』で日本エッセイスト・クラブ賞、20年『魯肉飯のさえずり』で織田作之助賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
70
家族ものの話が好きな人や台湾に興味があるひとにおすすめしたいほんになっている!通読して思ったことは家族のルーツを知ることや家族を大切にしたい気持ちってやっぱり大事なんだなって思った!魯肉飯。この食べ物はこの話のキーワードになります。母との思い出の味。そして母と父を繋いだ食べ物。主人公の桃嘉とその母雪穂の成長物語。雪穂は台湾出身である。そして日本で夫と2人子育てに奮闘した。そして桃嘉は新婚生活で少しずつずれが生じている。台湾。行きたい国。この本を読んでなおさら行きたくなった2023/12/26
ちえ
37
勤め先の取引会社の日本人と結婚し日本に来た雪穂、台湾人の母と日本人の父との間に生まれた桃嘉。言葉の不自由さで思いや気持ちを自分の内側から出せないこと、育ってきた文化を否定されること。二人の不安や恐れに痛みを感じ、途中途中で読むことを中断しゆっくり時間をかけ読了。本当に、分かっていなかったと振り返る。桃嘉の選択に心からエールを送りたい。台湾の家族たち、特におばさんたちのギリグァラギリグァラに心が温まる。そして食べること。「日本風台湾料理」食べたい。いや作りたい。後書きも解説もすべて、とても良かった。2023/10/31
ちゅんさん
36
とてもいい小説でした。あとがきも素晴らしい、“だれといてもどこにいても、あなたがあなた自身のことをいちばんに思いやれていますように”。読後、心があたたかさに包まれました(途中までいや、九割方読んでてつらかったですが!)。2023/11/19
NAOAMI
16
就活敗戦直後のプロポーズで逃げるように結婚した桃嘉。母は台湾人で、台湾在住時の父と結婚し日本に渡っている。台湾語に交じる中国語、祖父母が使う日本語。3言語の持つ響きや違い、入り混じった使われ方を通じて、母娘2代の恋愛観や生活を綴る。アイデンティティ探索のガチガチな政治的イメージが「台湾モノ」に多く感じるが、今作はどこか柔らかい印象。母が使う慣れないままの日本語が感情に素直で素敵に思える。日本で生まれた桃嘉はより日本的なのか。奥手な内面を感じる。民族性の顕れでもあるか。違いを越えて生きる人々の強みが伝わる。2024/01/28
アメヲトコ
6
2018年連載、20年単行本刊、23年文庫化。「ルーローハン」ではなく「ロバプン」というのがミソ。「台湾生まれ 日本語育ち」の著者ですが、本書の主人公は日本人の父と台湾人の母をもつ女性。母娘の関係を通して日本語と台湾語と華語との三言語のあいだの葛藤と共鳴(さえずり)が描かれます。「ふつう」の日本人のマイクロアグレッション(無自覚な差別)もまたテーマではあるのですが、そのことを描くのならば主人公の夫を分かりやすいダメ夫として設定しない方が良かったのでは。2025/03/25