出版社内容情報
正月の百貨店、美空ひばり、映画館の三本立て、小旅行、富士山荘での日日……。見たもの、食べたもの、出会った人々のことなど、身辺のできごとや思い出を簡潔な文章で綴る。大岡昇平、深沢七郎らの友人たちが去った、昭和最後の三年間を独特の感性で捉えた、著者最後のエッセイ集。〈巻末エッセイ〉武田花
内容説明
十九年ともに暮らした愛猫の玉が死に、深沢七郎、大岡昇平ら友人たちを送った、昭和最後の三年間。映画や食べ物、小旅行、富士山荘での暮らしなど、身辺のできごとや気持の照り降りを、簡潔で心に響く文章で綴った著者最後のエッセイ集。
著者等紹介
武田百合子[タケダユリコ]
1925(大正14)年、神奈川県横浜市生まれ。旧制高女卒業。51年、作家の武田泰淳と結婚。取材旅行の運転や口述筆記など、夫の仕事を助けた。77年、夫の没後に発表した『富士日記』により、田村俊子賞を、79年、『犬が星見た―ロシア旅行』で、読売文学賞を受賞。93(平成5)年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまはるか
18
1993年68歳で没した武田百合子最晩年のエッセイ集。日付のない「ある日」のことが綴られている。年代は大岡昇平死去1988年、昭和天皇崩御1989年から特定できる。当時は60代後半で老人を自覚したようで、街の食堂の賑やかなメニューを読んでいて「突然、あの世って淋しいところなんだろうな、あの世にはこういう賑やかさはないだろう」と思い「もうしばらくは生きていたい!!」という気持ちがお湯のように込み上げて来る。むすめHの財布を道端に置き忘れた話は、同様の出来事の思い出などに逸れて本題に戻らない。弄ばれた感。2023/07/19
kibita
12
天衣無縫という言葉がピッタリ。読んでいて本当に魅力的な方だったんだろうなあと推察する。飾らない言葉で飄々と綴られる日常と人々がとても良い。美空ひばりライブ会場のおばさん達や映画館の兄さん等、その観察力よ。何度も吹き出したり、老猫玉の最後の描写では倒れ込んで泣いてしまった。色々な月の表現を見てきたけれど、「にんにくの1かけらの形の月」というのは最高だ。彼女の文章はずっと読んでいたくなる。2025/03/13
ikedama99
10
読み始めると淡々とはしていても、惹かれる感じですいすい(?)と読み進める。観察眼がすごい。「富士日記」はすでによんでいるが、また読んで見たい。この方の文章はひかれる。2023/11/09
きのこ
8
読んだのはこれではなくて図書館にあった武田百合子全集の中の1冊。この人の文章を読んでいると、なぜか市井の日常を切り取る写真家の写真集を見ているような気になる。見たものを美化せず見下しもせず鮮やかに切り取る文章。情景とか音とかにおいとかが感じられるところがいくつもあった。誰でも書けそうな日常雑記でありながらきっと誰にも書けない、昭和の東京の(時々富士山麓の)スナップショットだと思う。 2023/07/27
crnbooks
3
富士日記の後、富士以外の場所多め、代々木公園でカラスに残飯をやったりする百合子さん。文体は少し違えど、同じ人間性を感じる。2023/09/12
-
- 和書
- 大切なことだけやりなさい