出版社内容情報
世界登山史上最大級の遭難――一九〇二年の八甲田雪中行軍遭難事件。一九九人もの犠牲者をだした痛ましきこの大事件に、歴史雑誌編集者の男が疑問を抱いた。鍵を握るのは、一二〇年前の白い闇に消えてしまった、ひとりの兵士。男は取り憑かれたように、八甲田へ向かうのだが……。未曽有の大惨事を題材に挑んだ長篇ミステリー。〈解説〉長南政義
内容説明
世界登山史上最大級の遭難―一九〇二年の八甲田雪中行軍遭難事件。一九九人もの犠牲者をだした痛ましきこの大事件に、歴史雑誌編集者の男が疑問を抱いた。鍵を握るのは、一二〇年前の白い闇に消えてしまった、ひとりの兵士。男は取り憑かれたように、八甲田へ向かうのだが…。未曽有の大惨事を題材に挑んだ長篇ミステリー。
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年、横浜市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。外資系企業に勤務後、経営コンサルタントを経て2007年、『武田家滅亡』でデビュー。『国を蹴った男』で第三十四回吉川英治文学新人賞を、『巨鯨の海』で第四回山田風太郎賞を受賞。そのほか文学賞多数受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
85
歴史雑誌の編集者である菅原。特集に選んだ八甲田山雪中行軍遭難事件。現地取材を進める内に、二つの疑問を見付ける。新田次郎さんの「八甲田山 死の彷徨」が有名。また、原因もつい新田作品のイメージで固まる。準備不足や指揮系統の乱れ等。新たな視点がありは。一つは当時から囁かれていた、対露に向けての防寒装備実験。実態として、その後の日露戦争で一定の成果があったと思われる。兵卒の装備に強く防寒を意識した物では無かったことに、相応の現実味がある。もう一つの疑問はミステリとして捉える。新たな視点を得、興味深く読了した作品。2023/07/09
森オサム
34
八甲田山雪中行軍遭難事件を扱った作品では有るが、現代パートと過去パートに分かれておりそれぞれドラマが描かれています。恐らく作者が書きたかったのは、帯にもある「人体実験」疑惑であろうかと思います。ただ、それ一点をメインに遭難事件を描いても読み応えが薄いので、現代パートに仕事や結婚生活に悩む主人公を据え、しかも結構強引にミステリー仕立てにして作品を成立させたのかな、と邪推しました。まあそれ位現代パートの座りが悪いと言うか、面白さが微妙でした。過去パートだけで何とか書き切って欲しかったと思う、主人公が嫌いやし。2024/08/31
ち~
33
120年前の八甲田山の悲劇を題材にしたミステリー。平社員の立場に不満をつのらせていた編集者、菅原。右肩下りの歴史雑誌の特集号で、八甲田山の悲劇に隠された謎を取り上げたところ企画は成功し、第二弾の取材として当初からの疑問を解明すべく、実際の行軍と同じ日に八甲田山入りした。120年前とシンクロする様に命の危機が迫った時、その謎は明かされる。菅原同様に、自らも八甲田山に囚われたような読書だった。現在と当時の話が交互に展開される構成が良い。限界を遥かに超えた極寒状態が人体に与える影響といったら………2023/06/04
みこ
27
歴史雑誌の記者が八甲田山遭難事故の真相を探る。歴史小説家と思いきや歴史ミステリー。歴史に記された事実の裏に隠された真実が明らかにされていく過程は読みごたえがあるし、序盤で意味深な言動を見せる人物の裏の顔が終盤で明かされたりとミステリー要素も強く一気に読み進めてしまった。ラストが近づくにつれてタイトルの意味も分かってくるのだが、最後はもしかしてバッドエンドだったのでは。2023/06/19
chika's
12
過去に映画も見たし本も読んだけど、とにかく、なんで中止して引き返さなかったの?って強く思うよ。この本では雑誌編集者が事件の新たな謎を探ってゆくが、帯に書いてあるからなんとなくわかっちゃう。終盤に、死者の数が一人合わないことの謎が明らかになるが、これもなー、悲しすぎるよ…。そしてラスト10行、菅原くんどうすんの?2023/10/08