出版社内容情報
三十一歳独身、文具メーカーの経理部に勤める椿は、出奔した妹の子ども・朔と暮らすことに。毎日の子育て、更に勉強も運動も苦手
で内にこもりがちな朔との生活は、時に椿を追いつめる。自分が正しいかわからない、自分の意思を押しつけたくもない。そんな中、どこかで朔を「他の子」と比べていることに気づいた椿は……。
解説 村中直人
内容説明
三十一歳独身、文具メーカーの経理部に勤める椿は、出奔した妹の子ども・朔と暮らすことに。慣れない子育てなうえ、勉強も運動も苦手で内にこもりがちな朔との毎日は、時に椿を追いつめる。自分が正しいかわからない、自分の意思を押しつけたくもない。そんな中、どこかで朔を「他の子」と比べていることに気づいた椿は…。
著者等紹介
寺地はるな[テラチハルナ]
1977年佐賀県生まれ。2014年に『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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mike
72
寺地さんのユーモア溢れる独特の言い回しが可笑しくて幾度も笑いながら読む。しかし、話は良い子とは?普通とは?というテーマへと移行し笑ってる場合じゃないよと真顔になって沈思する。これは椿が妹の子、朔を預かり育てる話である。しかし彼は所謂"普通"からはみ出ていてとても育てにくく大変なのだ。しかし朔と過ごす事で椿は"わたしの良い子"である彼を認め愛おしく思えるようになっていく。側で見ている私にも朔が可愛くて、自分のままで幸せな人生を歩んで欲しいと願わずにはいられなかった。うん、これは人にオススメできる本だ。2024/02/18
niisun
60
“生き方”や“子どもの育て方”についての“普通”や“標準”と葛藤する主人公の椿。物語の中盤、主人公が妹に代わって育てる小2の朔くんのことを「「良い子」じゃなくたっていい。ただこの世界を生き延びてほしい」と独り語る。しかし、終盤では、「「他の子みたいに」できなくたっていい。なんの条件も満たす必要はない。朔はそのままで、生きているだけで、十分すぎるくらい良い子だ」と変化する。朔くんと同じ小2で、しかも支援級に通う子どもを持つ親としては、とても共感できる。“わたしの良い子”でいいし、それを伝えないといけないと。2023/11/02
エドワード
59
文具会社の経理部で働く椿のところへ、未婚の母である妹の鈴奈が息子の朔を預けて沖縄へ行ってしまう。突然始まった幼児との生活。まっすぐな性格で何事にも真剣に取り組む椿と、勉強も運動も人間関係も苦手な朔。保育園、小学校、塾、初めて尽くしにトラブル続きの毎日にもめげない椿。ところが、椿の強さが鈴奈や同級生の静原たちを傷つけていたり、本当に人生は難しい。でも一番辛いのは朔本人に決まっている。黙して語らない朔の心の裡をしっかり表現する寺地さんの描写が見事だ。屈折した鈴奈と椿が和解して再出発する終幕の希望に安堵する。2022/10/25
のんちゃん
49
寺地作品2冊目。お気に入りさんからのご紹介。31歳の小山椿は恋人と遠距離恋愛の会社員。彼女は出奔し沖縄で暮らすシングルマザーの妹の息子朔を育てている。朔は何かにつけてのんびりの大人しい子で、学齢を迎えると椿は悩み始める。良い子の定義、自分の考えの正否、その強制等について考えさせられる物語。寺地先生のテーマなのか今回も「固定化された価値観からの解放」が随所に著されている。その箇所の幾つもが自分という存在、私が信じる見識を疑ってかかるトリガーになる。でもそれを小難しくなく温かく描ける作者はいつもすごいと思う。2023/03/21
みっこ
46
子どもの頃それなりに優等生だった私。でもずっと思っていました。成績がいいからとか大人の言うことを聞くからとかじゃなくて、ありのままを認めて欲しい、褒めて欲しいと。でもやっぱり遠くから眺めるのと当事者になるのは違う。娘も今のところ同じような優等生タイプ。あれだけ思っていたのに、こんなこと知っててすごいとか、〇〇ができてすごいとか、そんなことばっかり褒めてしまう自分がいる。何かができてもできなくても、生きているだけで世界一可愛い良い子なのに。椿のどこかドライな性格はちょっと自分に似ていて親近感。→コメントへ2023/03/04
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