出版社内容情報
雨漏りの修理にきた屋根屋、永瀬は、妻の死をきっかけに心を病み、治療のために夢日記を付け始め、今では夢を自在に操れるという。永瀬に導かれ「私」は夢の中で落ち合うようになる。奈良の瑞花院吉寺へ、そしてフランスのアミアン大聖堂へ。空を飛び、時を越え、夢と現実のあわいに二人が行き着いたのは……。〈解説〉池澤夏樹
内容説明
雨漏りの修理にきた屋根屋の永瀬は、妻を喪い、心を病んだことから夢日記を付け始め、今では夢を自在に操れるという。主婦の「私」は、永瀬と夢の中で落ち合い、旅を重ねるようになる。名刹の屋根に遊び、フランスの大聖堂を巡り、現実とのあわいの「場所なき場所」で、二人の時間は深まってゆくが…。
著者等紹介
村田喜代子[ムラタキヨコ]
1945年、福岡県生まれ。77年、「水中の声」で、九州芸術祭文学賞最優秀作を受賞、本格的な執筆活動に入る。87年、「鍋の中」で芥川賞を受賞。90年『白い山』で女流文学賞、92年『真夜中の自転車』で平林たい子賞、98年「望潮」で川端康成賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞を受賞。14年『ゆうじょこう』で読売文学賞、19年『飛族』で谷崎潤一郎賞、21年『姉の島』で泉鏡花賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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秀玉
13
二泊三日の旅行で読了。夢で逢いましょう~で変化がない話のような気がして途中断念がよぎったが読み終えた。最後はファンタジー系の要素も感じる内容。映画「インセプション」に通じるものがある、小説は2014年、インセプションは2010年、どっちがどうでも良いが、夢から現実なのか夢の途中かは、だんだん曖昧になるのだろう。インセプションはコマを回すが夢か現実かを見分けるキーだが、屋根屋は夢の中へ逃避する手前で終わる。屋根屋の最後、永瀬屋根屋はどこに行ったのだろう。どう解釈するかは読者。的な物語より白黒がつく物語が好き2025/04/08
ひでお
9
屋根職人と主婦が、夢の中で不思議な邂逅をするお話し。私はよく夢を見るけれど起きたら何も覚えていない。だからこの話のようにリアルで記憶に残る夢を見た経験は無い。しかし妻を亡くして夢への逃避をはかった職人のように強い想いがあればそういうこともあるのかも。夢と現の境目が曖昧になるのも意識下ではあり得るかもしれない。家族との繋がりがあった主婦は現実に踏みとどまったけど、人の繋がりに渇望すると夢でも現実でも、可能なほうに求めていくのかな。2023/04/13
門哉 彗遙
5
僕も子どもの時は夢を操作できた。高いところから飛び降りる夢を見たいって念じながら寝たら、気がついたら崖っぷちに立っていた。そこから、さあ飛び降りようとするんだけど、もしこれが現実だったらどうしようと躊躇してしまう。でも、やっぱりこれは夢なんだからと、エイって飛び降りた。あの時の感覚は50年以上たった今も覚えている。急角度で落ちていくジェットコースターに乗っているようだった。で、目が覚めたら布団の上。 この小説は夢の中がリアル過ぎて、少し窮屈だ。制約が多すぎる。夢はもっと自由なほうが良い。2022/12/04
YH
4
夢の中で2人で塔や屋根を楽しむための旅を繰り返す屋根屋と施主の妻のみのり。旅の相棒、思い通りの夢を見るための師匠と弟子みたいな関係ではあるものの、何とも隠微。途中、屋根屋がみのりに言い寄るが、こんな関係なら情欲に突き動かされても仕方ないと思う。終盤、京都旅行から、夢と現実の境を見失った辺りからの展開は何とも不条理だった。2024/12/29
papaya
4
雨漏りがするので、屋根の修理を依頼したおうちの話。奥さんが語り手。屋根専門修理の工務店、長瀬工務店。屋根屋の長瀬さんは10年前に奥様を亡くした独り者。心を病んで医者に行き、夢治療を受ける。夢を自在にコントロールして心を軽くする。その話に惹かれた奥様は、屋根屋と一緒に夢の旅行に。。。割と面白ろかった。2023/01/14