出版社内容情報
北海道で暮らしていた長電話魔の著者は、「電話代をそっくり部屋代にすれば、東京のソコソコの部屋が借りられる」と気づいて東京に引っ越した。
将来を案ずる両親への葛藤、友人との尽きない話。
まさかの失敗談、女であるがゆえの微妙なモンダイ。
本を読んでひとり芝居し、旅先のハイキングコースで遭難の危機。
天井を帚で突き破って方違え……。
才気溢れる若き小説家が、愛と怒りと笑いを交えて綴る傑作エッセイ。待望の復刊!
〈解説〉青山美智子
内容説明
長距離の長電話が好きな著者が「電話代より部屋代が安い」と気づいて始めた東京暮らし。夜はコールサインが鳴り響き、楽しくも賑やかに過ぎていく。将来を案ずる両親への葛藤、友人との尽きない話。本を読んでひとり芝居し、天井を帚で突き破って方違え…。才気溢れる若き小説家が愛と怒りと笑いを交えて綴る傑作エッセイ。
目次
番外篇の女
思い込み
ABOは知っていても
桐壼返り
一子相伝の美学
記憶
女の長電話
間違い電話はミステリー
病は気から
悪くない街
ヨソイキ語
親心
父の国鉄物語
舞台裏はたのし―競馬篇
十年ののち
惚れる
女ひとり旅作法
私の取材旅行
アンケートをとりたい
説教ばあさんになる日
育児ゲーム
三界に家なし
女の苦笑い
著者等紹介
氷室冴子[ヒムロサエコ]
1957年、北海道岩見沢市生まれ。77年「さようならアルルカン」で第十回小説ジュニア青春小説新人賞佳作を受賞し、デビュー。2008年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そうたそ
8
★★☆☆☆ 著者が東京暮らしを始めた頃のエッセイ。もっと東京での生活が書かれているかと思いきや、中身は普通のエッセイだった。とはいえ、著者のユーモアが溢れる肩の力を抜いて読めるようなエッセイで、時代的な古さはあるだろうが、内容は決して色褪せていなかった。2025/06/05
sea
3
氷室さんはきっと誰よりもまっすぐで純粋な人なんだと思うのだけれど、そのまっすぐの軌道が明らかに大多数の人と違う方向に突き抜けているからおもしろい。そのユニークさを当人がてんで気づいてないことを含め。 青山美智子さんの解説はほんとうに素晴らしく、氷室さんへの愛に満ちていて、いつかわたしもこれほど愛に溢るる言葉を届けられる相手を見つけられたら、その人にこれほど全身全霊で愛を伝えられたら、この世に思い起こすことなどないなぁと、大それたことを思った。2022/08/03
千景
3
長電話のしすぎで「この電話代払うなら東京のそこそこいい家に住めるな…」って東京に引っ越すって…長電話やばいな…と思ったけど、よく考えたら私も、LINE通話は無料だからって平気で4時間ぐらい通話してる……🤔おや? 少しずつ変わって来てるような気はするが、 しかし根本的なところはなかなか変われないのだろうか。 女が女として強く生きていくこともまた美しいのでしょうが、女も男も関係なくただ揺蕩うように生きていきたいなと感じる……。二分されるの、疲れたよー。2022/06/27
とんとん
3
祖父の葬儀の準備をしているときに見た、不自然な鬘を付けた男性。何年も経って、その男性の姿が脈絡なく浮かんで来た時のことが書かれた「記憶」がすごい。〈田舎には不思議な逞ましさ、生命力とでもいうべきものがあって、仮通夜だろうと本葬儀の席だろうと、目引き袖引きのうわさ話や人物批評は常に、生き生きと行われる〉……こんな文章なかなか書けないです。2022/07/10
ズグリーブ
2
いい話よりトホホな話を選ぶセンスがすてきだ。個々の描写も生き生きとして秀逸。多武峰で遭難しかかったときチェルシーの包み紙に励まされる心境とか、自分の体験のようにありありと思い浮かぶ。p77-78「そのうちにインカム式の携帯用超小型電話ってできると、おもしろいわね」「今よりもっと、排他的な世の中になるわね。日常生活してる時も、現実無視して、興味のある人としかしゃべってないんだもん」――。1990年の本でこれ。氷室さんはやっぱりめちゃくちゃ人間が見えている。「光る君へ」の感想とか聞きたかったなあと、つい思う。2024/05/08