出版社内容情報
手柄を挙げろ。どんな手を使っても――。
天文十五年。功を焦り戦場を駆ける掃部介は、血まみれで横たわる旧友・猪助を見つける。かろうじて息のある猪助は息子に恩賞を渡してほしいと、討ち取った首を掃部介に託す。その首は、敵方総大将のものであった――。(「頼まれ首」)首級ひとつで人生が変わる。欲に囚われた武士たちのリアルを描く六つの悲喜劇。
内容説明
天文十五年、河越夜戦後の掃討戦。北条家の下級武士である掃部介は、瀕死の状態の旧友・猪助を見つける。わが子に恩賞を遺すためと、友が命懸けで獲った首級を託される掃部介。だがその首は敵方総大将、上杉朝定のものであった(「頼まれ首」)。選択ひとつで人生が変わる。欲に囚われた人間の本性に迫る衝撃の六篇。巻末対談、乃至政彦×伊東潤。
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年、横浜市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。外資系企業に勤務後、経営コンサルタントを経て2007年、『武田家滅亡』でデビュー。『国を蹴った男』で第三十四回吉川英治文学新人賞を、『巨鯨の海』で第四回山田風太郎賞を受賞。そのほか文学賞多数受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くらーく
4
下級武士にとっては、待遇や環境を一変させる首。敵の大将クラスの首を持って来ると、一気に上級武士に。確かに足軽クラスの武士(場合によっては農民)を主にする小説は無かったかもなあ。そういう意味では画期的なのかも。 ある意味、現在の企業も同じようなもので、大きな案件を取ってきたり、プロジェクトを成功させると、抜擢されて、降格が無ければ安穏としたサラリーマン生活が送れる。。。 監視役は、どっちにしても嫌われ役だし、出世もしないよねえ。なんて、少し身につまされて読み終えましたとさ。2022/02/26
Y...
2
頼まれ首・間違い首・要らぬ首・雑兵首・もらい首・拾い首は後北条氏の戦いを舞台にした「首」にまつわる雑兵による六つの短編。先が読める話もあるが雑兵首が一番良かったかな。2022/01/22
好奇心
1
首獲り、戦国時代特有の事象であり、言葉であったのではないか、当時の足軽下級武士にとって生活の糧・自分の身分を上げるには戦場に出て手柄を上げるしかなかったのではないか、その手段として敵の首級をあげる、なかでも名のある武将を打ち取る、打ちとった首を腰に下げて戦ったとは想像すると、滑稽に見えるが、それが物的証拠であった、写真のない時代、首実検役も存在して、本人が打ち取ったことを確認する監視役もいた、首獲りが自分と家族の生活を支える手段だった 2022/02/09
ひで
0
#読了 題名通り、戦国時代の #首獲り を共通テーマにした #伊東潤 さんの短編集。舞台は著者得意ジャンルの一つ、北条氏を中心とした北関東、時代は天文年間から本能寺の変後の再混乱期。 武田家臣の、状況としての戦国の苛烈さを描いた『惨』と違って、槍働き層の現実的な淡々とした戦と、手形としてのヒトの首が描かれている。 ストーリーとして面白いのは「雑兵首」だが、印象に残るのは「拾い首」だな。2023/02/26