出版社内容情報
恋のライバルが人間だとは限らない! 洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する――本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。
内容説明
葉っぱの実験をこつこつと続ける院生・本村紗英を、どん底に叩き落とした大失敗。研究仲間(変人集団)も戸惑うなか、窮地に光を投げかけたのは料理人・藤丸の反応で―。人生も、実験も、筋書きがないから面白い。世界の隅っこが輝き出す日本植物学会賞特別賞受賞作。(全二巻)。特別付録「藤丸くんに伝われ 植物学入門(下)」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
483
下巻を読み終えてみると、タイトルの「愛なき」とは裏腹に、愛に満ちた暖かい物語であったとしみじみと思う。登場人物たちのそれぞれが、みんなそれぞれの形での愛を表出する。本村らの植物への尽きることのない愛。藤丸の、いわば純愛。松田、諸岡両教授の学問と弟子たちへの愛。リアリティを欠くほどではないものの、登場人物の全員がいい人すぎるのではあるけれど。そして、これを書いた三浦しをんの物語ることへの強い愛を感じる作品だった。きっと、本村のようにひたむきに真摯に物語に情熱を傾けているのだろうと思う。2024/12/04
さてさて
351
私達の『知りたい』という欲求を満たしてくれる舞台裏には、研究者の皆さんの地道な実験と研究の日々が隠されていることをこの作品によって知ることができました。この世にはまだまだ未知の事ごとも多く残されています。しかし、『知りたい』という好奇心が、『知りたい』という気持ちが、そして『知りたい』という情熱が人にある限り、いつの日かそんな事ごとが解き明かされる未来がきっと訪れるのだとこの作品を読んで確信しました。三浦しをんさんの”お仕事小説”の傑作がまた一つここに誕生した!そんな風に感じた人の情熱に溢れる作品でした。2022/01/05
ひさか
200
読売新聞朝刊2016年10月12日〜2017年9月29日連載に加筆修正し2018年9月中央公論新社から刊行。2021年11月2分冊にして中公文庫化。藤丸くんが最後まで良い性格だったのが救い。楽しかった。ちと長すぎの感あり。2022/02/23
kk
188
持てる情熱の全てを植物の研究に注ぐ女性院生と、彼女に畏敬と憧れを抱く見習いコックさん。研究者達に寄り添う著者の優しい視線。そんな二人と、研究者たちに寄り添う著者の優しい視線。感想はただ一言。藤丸くんに幸あれ。2022/03/29
あきぽん
178
葉っぱの研究に一途に生きる植物学者・本村さんと、そんな彼女を一途に料理で支える料理人・藤丸くん。今は仕事の関係でしかないけど、これはもうこれ以上ないくらいお似合いですね!! タイトルとはうらはらに愛にあふれた作品世界。推し活を相手に見返りを求めない片思いとするならば、研究って推し活なんだ…なるほど。2022/01/10