出版社内容情報
恋のライバルが人間だとは限らない! 洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する――本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。
内容説明
恋愛・生殖に興味ゼロの院生・本村紗英に、洋食屋の見習い・藤丸陽太が恋をした。殺し屋のような教授、サボテン一筋の後輩男子に囲まれ、本村は愛しい葉っぱの研究に没頭中。実験やイモ掘り会に潜り込む藤丸の想いは花開くのか。「知りたい」という情熱を宿す人々の愛とさびしさが心を射る長編。(全二巻)。特別付録「藤丸くんに伝われ 植物学入門(上)」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
459
三浦しをんの描き出す小説世界の題材の豊かさにはいつも感心するばかり。しかも、そのそれぞれはきわめて専門的な領域に達している。例えば『風が強く…』しかり、『舟を編む』しかり。今回の舞台は東大の植物学教室。しをんさんも、これを機にかなり勉強した模様。そして、その成果がこうして結実したのだが、単に専門性にとどまらず、その分野独特持つ独特の雰囲気を醸し出すのが実に上手い。言語学でいうところのプロソディの捕まえ方(最近はやらなくなったがタモリさんのハナモゲラ語)のセンスが際立って確かなのである。2024/12/04
さてさて
335
『ひとは植物にはなれない。でも、ひとであるからこそ、植物を知ることも、研究に情熱を燃やすことも、スイートポテトを味わうこともできる』と植物の研究に情熱を燃やす本村紗英。そして、それを見守る藤丸陽太の不思議な関係が、”お仕事小説”の中に絶妙な温度感で描かれるこの作品。『狂おしいほどの情熱に取り憑かれている』という本村の情熱が”お仕事小説”の面白さをこれでもかと牽引するこの作品。『植物学』という全く未知の世界の面白さを知る機会を与えてくれた、三浦しをんさんの魅力にどっぷりと浸ることのできる、そんな作品でした。2022/01/03
ひさか
195
読売新聞朝刊2016年10月12日〜2017年9月29日連載に加筆修正し2018年9月中央公論新社から刊行。2021年11月2分冊にして中公文庫化。舟を編むの路線かと思いましたが、そこまでのことはなく、カリカチュアした研究者たちが登場するやや軽めのお話。ヒロインの本村さんの植物好きが楽しい。下巻へ。2022/02/23
あきぽん
164
洋食屋で働く青年が恋に落ちた相手は、植物に恋するT大院生だった…。これ双方片思いでも失恋の心配がないですね。若いうちに好きでのめりこめるものが見つかった人はとても幸せですよ。そして私も前から、恋愛成就なくして子孫を増やしていける植物が羨ましいと思っていました。2022/01/03
なっぱaaua
152
三浦しをんさん久しぶり。「仏果を得ず」や「舟を編む」の様なお仕事小説。というか東大の大学院植物学研究室と近所の食堂のお話。お仕事絡みの三浦さんのお話は読んでて安心感がある。植物学は何となく興味があって植物園とかはよく行くのだけど、地道な基礎研究がこういうものだとは知らなかった。シロイヌナズナの研究は地味だけどきっと何かの役にたつのだろうとは思う。女性研究者の研究を続ける難しさも伝わってくるのだが。本村さんと藤丸君とならそれを乗り越えてくれそうな感じもするよね。下巻も楽しみ。2022/01/24