出版社内容情報
いま裏切れば、助かるかもしれない。
武田家滅亡直前。家族、財産、名誉、命――
すべてを失うかもしれない状況のなかで、武士たちがとった行動とは?
天正十年(一五八二年)。主家を裏切り織田についた武田家重臣・穴山梅雪は、御礼言上に訪れた安土で信長から信じ難き命を受ける。「家康を殺せ。成し遂げれば武田領をそのまま返そう」(「表裏者」)。武田家滅亡期。すべてを失うかもしれない状況を前にした、武士たちの選択とは? 人間の本性を暴く五篇の衝撃作。
内容説明
天正十年(一五八二年)。主家を裏切り織田についた武田家重臣・穴山梅雪は、御礼言上に訪れた安土で信長から信じ難き命を受ける。「家康を殺せ。成し遂げれば武田領をそのまま返そう」(「表裏者」)。武田家滅亡期。すべてを失うかもしれない状況を前にした、武士たちの選択とは?人間の本性を暴く五篇の衝撃作。
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年、横浜市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。外資系企業に勤務後、経営コンサルタントを経て2007年、『武田家滅亡』(KADOKAWA)でデビュー。『国を蹴った男』(講談社)で第三十四回吉川英治文学新人賞を、『巨鯨の海』(光文社)で第四回山田風太郎賞を受賞。そのほか文学賞多数受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
36
伊東氏の戦国・武田家滅亡の物語「天地雷動」「武田家滅亡」を読みついでのこちら。それらに登場する南信濃の戦役キー・マンを中心に描く充実短編集だ。あっけなくも坂道を転がるごとく滅びていった武田家という史書等での解説。曰く、木曾義昌の裏切りがきっかけ、いやそれに先行する穴山信君(梅雪)の存在、等々。ワンワードで評されるほど単純な話ではなく、その過程には各々の止むに止まない事情があった。本書はその部分に焦点をあて、お得意の伊東マナーのフィクションを交えて、興味深くも読み応えありの一作に仕上げている。2022/01/06
ソーダポップ
19
信玄の死去に伴い、家督を相続した勝頼と、それに対抗する信長、秀吉、家康がそれぞれの立場で、何を企て考えて駆け引きをして、長篠の戦いまで突き進んだかを小説化したものであるが、テーマは三千挺の銃の手配と、勝頼と武田の重臣との確執が中心となっている。大変面白い小説で興奮して読み終えた。伊藤潤超リアリズムのハードな描写がよい作品でした。2024/07/14
鮫島英一
17
天正10年2月、信長は甲州征伐を開始する。前年に遠江国の要所高天神城を見殺したことで、武田氏では家臣達の動揺が収まっていなかった。そこに、この報。誰もが思った明日は我が身と。甲斐武田氏滅亡のカウントダウンが始まる。ある者は誇りある死を選び、ある者は臆病にも敵前逃走し、またある者は早々に敵と通じる。生きるという目的のためなら、人はどこまでも恥知らずになれる。精強を謳われた甲斐武田の姿はなく滅びゆく姿に目を背けたくなるけど、それこそが本作品の凄味があり、流石は伊東 潤先生だと再認識した一冊でした。2022/01/02
サケ太
16
武田家の人々を描いた短編集。裏切り、裏切られ、信じ、信じられ。様々な人物たちの生き様が活写されている。良かった。2022/01/12
hiyu
5
綻びが見え始めた武田家の周辺人物を描いているのだが、目次以上に冒頭から守るものへの執着が激しく示されており、また、権謀術数の在り方をみても、選択の困難さも見て取れた。2022/08/12