出版社内容情報
「航海記」前夜、慶応医学部神経科での疾風怒濤の医局員時代を描く。没後10年に新装改版し、武田泰淳との対談「文学と狂気」を収録。
内容説明
『どくとるマンボウ航海記』前夜。慶應病院神経科に勤める若きマンボウ氏は、愛すべき患者たちとふれあい、変人ぞろいの同僚と安酒をあおりつつ、人間の本質に思いをはせる―。ユーモラスな筆致のうちに、作家・北杜夫の鋭い観察眼と深い内省が窺えるエッセイ。新たに武田泰淳との対談「文学と狂気」を増補。
目次
大遅刻と教授からしておかしいこと
医局員のほとんどが変っていること
フレッシュマンの生活とイカモノ食いのこと
朝寝坊の万年おじさんのこと
宇宙精神医学研究室のこと
精神科医一刀斎のこと
医局長の子分役のこと
留学を思いたつこと
山梨県の病院へ売りとばされたこと
助人ついに来たる
愉しい日々と悲惨な夜
東京へ帰ったことと航海のこと
著者等紹介
北杜夫[キタモリオ]
1927(昭和2)年、東京生まれ。父は歌人・斎藤茂吉。52年、東北大学医学部卒業。神経科専攻。医学博士。60年、『どくとるマンボウ航海記』が大ベストセラーとなりシリーズ化。同年『夜と霧の隅で』で第四三回芥川賞受賞。その他の著書多数。2011(平成23)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クプクプ
80
精神科の医者と患者の歴史がよくわかる良書。トーマス・マンの「魔の山」の引用を筆頭に海外の文学を比喩に精神障害をわかりやすく紹介しています。北杜夫が山梨の精神病院で東京では見られない、症状の重い患者と接した記録は貴重です。北杜夫はよく自分のことを躁鬱病と話していましたが、この本では自分のことを正常だと書いていました。最近では企業が精神障害者を雇っていると思いますが、その方たちを理解するのに最適な一冊です。医学的にも文学的にも興味深かったです。2022/01/15
吉田正
3
患者への視線が優しいね。2021/10/06
Shinya Fukuda
3
大学卒業後、慶應の医局に勤め始めその後水産庁のマグロ調査船に乗って渡航するまでの期間が描かれる。当時の精神科は黎明期で医局は奇人変人揃いだった。そのトップのM教授は絶大な権力を握っていた。本当か嘘かわからないような話が次々に出てくるが解説のなだいなだ氏によるとこれが全て本当らしい。山梨の病院の話は興味深い。70数人の患者を一人で診る、予算が少なく薬が使えない、今はこんなことないだろう。悪口ではなく真実としてもよく訴えられなかったものだと思う。2021/09/24
左近
3
書店で見つけて発作買い。精神科医として歩み始めた若き日々を綴る。知性と教養に裏打ちされた、虚実綯い交ぜのユーモア、人間社会への鋭い観察。愉快に笑わせながらも、時折、ふぅむと考えさせる。楽しい読書時間を提供してくれた。浅学にして恥ずかしながら、『航海記』はもちろん知っていたが、『昆虫記』もあったとは。これは是非読んでみなければならぬ。ちなみに「そうか、仙台にいたからペンネームが北杜夫なのか!」と突然叫んだら「何を今更」と家族に馬鹿にされた。2021/09/09
二木弓いうる@デビュー作5/2発売!
1
精神科医エッセイ。シリーズものと知らずに読んでしまった。医局記だけでも楽しく読めたけど航海記を先に読めばもっと楽しめたかも。2023/08/29