出版社内容情報
好きなもの――お粥、酎ハイ、バスの旅。「味な話」「酔虎伝」「ほろよい旅日記」の三部から成るコミさんのおおらかな食・酒・旅エッセイ。〈解説〉角田光代
内容説明
とくべつうまいものを、なんて考えるようでは、うまいものが食えるわけがない―。好きなものはお粥、酎ハイ、バスの旅。タマゴに馬鈴薯、市場あるき。家で、外で、旅先で。飲んで食べて、また飲んで…。「味な話」「酔虎伝」「ほろよい旅日記」の気ままで楽しい食・酒・旅エッセイ。初文庫化。
目次
味な話(北のサカナ;馬鈴薯;ほろよい飛〓日記 ほか)
酔虎伝(ブドウの花;ノンベエむきのブドウ酒;甲州産ブドウ酒 ほか)
ほろよい旅日記(家出バッグ;港さがし;風景のなかの昭和 ほか)
著者等紹介
田中小実昌[タナカコミマサ]
1925年、東京生まれ。小説家・翻訳家。東京大学文学部哲学科中退。79年、「浪曲師朝日丸の話」「ミミのこと」で直木賞を、『ポロポロ』で谷崎潤一郎賞を受賞。2000年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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penguin-blue
43
作家が書く酒の本、というと渋く薀蓄を傾けながらのひとり酒か、または無頼を気取ってやや荒んだ感じで酒に溺れる、のいずれかのイメージ。それがまあコミさんときたらとにかく愛すべき困ったヨッパライである。酒は安くてたくさん飲める方がいい、と言い切り千鳥足でなじみの店をはしごし、時にチンボツする。店のお姉さんたちにやや軽く扱われながらも愛され面倒を見てもらっている。こんなおじさんと酒場で居合わせたらちょっと離れた席でちらちら見ながらおじさんを肴に苦笑しながら飲み、後日思い出して楽しく家飲みできるかも。2021/03/28
ホークス
42
食べ物や酒にまつわるエッセイ集。著者は1925年生まれの作家。のんびりしたおしゃべりの背景に、凄まじい時代、人間への諦めと裏返しの愛情がある。「メリットという言葉が嫌だ。英語の形を借りたニホン語なのだろう」と言う。ぐっとハラワタに手を突っ込まれた感じだ。与太話の中に爆弾が仕込まれている。角田光代も解説で言っていた。基本はお付き合いを遠慮したい飲んだくれ。昔は寒くなるにつれ、鱈の切身、さつま揚げ、メザシなどの塩が薄くなり、美味しくなったと言う。寒いと保存用の塩が少なくて済んだ話だが、著者が語ると味わい深い。2022/01/21
bunca
1
悪態はついていても愛情を感じる。 食べ物の描写はそれほど詳細ではないけれど、情景が目に見えるよう。空気感というか雰囲気を醸し出すのがうまいのかと思う。 「どこどこ産の食材だから美味しい」とか決めてかかるのは、コトバをたべておいしがっているだけで、ほんとにうまいのか。という記述にはハッとさせられた。 戦後間もなくの新宿の描写が興味深かった。2024/01/29
みさこ
1
酒飲みのオヤジと言ってしまえば身も蓋もないけれど、人徳というか人たらしというか、なんとも憎めない方ですね。2022/10/19
Misa-pi
1
縛られない人だなぁ、と思った。風に吹かれて、気の向くまま。旅はバス。行き先がわからなくても乗る。家の中なら裸で酒をのみ飯を食う。同席はするけど共有はしない。常識に縛られないけれども常識を否定するわけではない。自分の自由と同じように他人の自由も尊重する。決めつけない。文字を仕事にしていながら言葉にも縛られない。心地よいようにしているだけなのだろう。2021/09/23