出版社内容情報
「敵はおみかん食べている」
男と女が二人だけで山の中で蜜柑を食べている以上、きっと何事か始まるに違いないと思った――。(「白い街道」より)
若い男女を「敵」と見なして偵察するたわいない遊び、美しい少女への憧れ、覚えず覗き見た大人の世界……。無邪気で愛らしいだけでなく、時に冷徹な目で大人を観察する〈少年〉を主人公とした、叙情豊かな佳篇を収録。「晩夏」「少年」「帽子」など教科書名短篇を含む、全十四篇のアンソロジー。〈巻末エッセイ〉辻 邦生〈解説〉椎名 誠
【目次】
少年/蜜柑畑/晩夏/滝へ降りる道/投網/ざくろの花/黙契/白い街道/颱風見舞/帰郷/ハムちゃんの正月/馬とばし/帽子/魔法壜
〈巻末付録〉赤い実(『しろばんば』より)/少年に与える言葉(随筆)
〈巻末エッセイ〉辻 邦生 〈解説〉椎名 誠
内容説明
たわいない遊びや美しい少女への憧れ、そして覚えず垣間見た大人の世界…。誰もが通り過ぎるが、二度と帰れない“あの日々”の揺らぐ心を鋭敏な感性でとらえた、叙情あふれる十五篇。表題作ほか「少年」「帽子」「赤い実」など教科書名短篇を含む、文庫オリジナル・アンソロジー。
著者等紹介
井上靖[イノウエヤスシ]
1907(明治40)年、北海道生まれ。静岡県に育つ。京都帝国大学哲学科を卒業後、毎日新聞社に入社。50年「闘牛」で芥川賞を受賞し、51年に退社、作家生活に入る。58年『天平の甍』で芸術選奨文部大臣賞、60年『敦煌』『楼蘭』で毎日芸術賞、64年『風涛』で読売文学賞、69年『おろしや国酔夢譚』で日本文学大賞、82年『本覚坊遺文』で日本文学大賞、89年『孔子』で野間文芸賞など、受賞作多数。その他の著作に、『あすなろ物語』『しろばんば』ほか自伝的小説、『風林火山』『淀どの日記』ほか歴史小説、『氷壁』ほか現代小説など。76年、文化勲章を受章。69年にはノーベル文学賞の候補となった。1991(平成3)年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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