出版社内容情報
井上靖「驟雨」、大岡昇平「春の夜の出来事」に始まり、田中小実昌「ドラム缶の死体」まで。一九五〇年代から八〇年代に発表された非ミステリ作家による知られざる上質なミステリの数々。小沼丹、野呂邦暢、吉田知子らによる十編を収めた異色のアンソロジー。 〈解説〉堀江敏幸
内容説明
井上靖「驟雨」、大岡昇平「春の夜の出来事」に始まり、田中小実昌「ドラム缶の死体」まで。一九五〇年代から八〇年代に発表された非ミステリ作家による知られざる上質なミステリの数々。小沼丹、野呂邦暢、吉田知子らによる十編を収めた異色のアンソロジー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
120
10人の文藝作家によるミステリーというか奇妙な結末などを扱ったアンソロジーです。やはり読んでいてゆったりした気分というものを感じます。井上靖、大岡昇平、小沼丹、遠藤周作、大庭みな子など楽しめました。野呂さんのは中公文庫で出ている作品集ですでに読んでいました。堀江さんの解説がまたいいですね。2021/04/21
HANA
65
何かが進行しているのに、何が起こっているのかわからない。これは怪談のお家芸であり、あくまで理に落ちないといけないミステリとは縁遠いものだと思っていたが、ここに収められた諸作を見るとミステリでもそれが立派に通用する事がわかる。題名に事件の「予兆」と冠されているだけあり、事件自体よりその背後であった出来事みたいなものが描かれているのが多い。その極点が「剃刀」。題材はよくあるが、会話からの盛り上げが本当に怖い。イヤミスじみた「上手な使い方」実録じみた「ドラム缶の死体」とどれもこれも「嫌」な作品ばかりであった。2021/07/23
わんつーろっく
26
1950~80年代に発表された非ミステリー作家によるアンソロジー。作者の殆どが故人であり、発表当時の時代背景に昭和の香り。謎のようで謎でもなく、なんだよくわからないうやむやな感じが事件の予兆なのでしょうか。もっとスパイスの効いた神秘を期待していたので後半ちょっと失速。田中小実昌さんの短編は解説読んでも、わからない感じがミステリアス?遠藤周作と野坂昭如が久しぶりで面白かった。教科書名短編というシリーズもあるようなので、こちらも読んでみよ。2022/09/08
くさてる
19
昭和に発表された非ミステリ作家によるミステリ短篇集。井上靖、大岡昇平、遠藤周作、野坂昭如、とさすがの名前が並ぶだけあって、粒ぞろいで面白かったです。なかでも、野呂邦暢「剃刀」はほんとにもう。まったくもう。ミステリ仕立てではあるものの、それだけに終わらない深みを持つ作品が多く、楽しめました。2020/10/14
あゆみらい
17
井上靖、大岡昇平、小沼丹、山川方夫、遠藤周作、野呂邦暢、吉田知子、野坂昭如、大場みな子、田中小実昌さん作品。名前は皆さん知っていますが、まともに読んだことがあるのは井上靖さん遠藤周作さんくらいでしょうか。井上靖さんの「驟雨」がよかった。はっきりした結論はでないミステリのような短編集。2023/01/23