出版社内容情報
改造社は関東大震災で大打撃をうけたが、昭和にはいり「円本(えんぽん)」という手軽な文学全集でベストセラーを送り出した。本書はその一冊で、「世界大衆文学全集」のなかの一冊であった。
円本は多額の印税を作家や翻訳者にもたらし、つぎつぎと企画をたてるなかで作品が足りなくなり、代訳も横行した(名の知れた作家の印税で、下積みの作家がうるおうという構図もあった)。後日、江戸川乱歩もこの翻訳がすべて渡辺温らによることをあかしている。昭和初期の江戸川乱歩全集にははいっていたが、その後の全集からは削除された。訳者・渡辺温は二十七歳で事故死した作家で、共訳はその兄でミステリ作家となった渡辺啓介である。附録として江戸川乱歩と谷崎潤一郎の渡辺温についての文章を収載。書き下ろしは渡辺東による渡辺兄弟にまつわるエッセイと浜田雄介による解説。
内容説明
本書は刊行当時「江戸川乱歩訳」で発売され、後日、全集から削除された幻のベストセラーである。実際の訳者は二十七歳で事故死した作家・渡辺温、共訳はその兄でミステリ作家となった渡辺啓助である。雑誌「新青年」で活躍した兄弟のゴシック風名訳が堂々の復刊。附録は江戸川乱歩「渡辺温」、谷崎潤一郎「春寒」。
著者等紹介
ポー,エドガー・アラン[ポー,エドガーアラン] [Poe,Edgar Allan]
アメリカの小説家・詩人。1809年、ボストン生まれ。雑誌編集のかたわら詩や短篇小説を発表。史上初の推理小説、また怪奇小説の傑作を残し、それらの分野の発展に多大な功績を残した。詩や文芸評論においても高い評価を受けている。1849年没
渡辺温[ワタナベオン]
1902(明治35)、北海道生まれ。本名温(ゆたか)。渡辺啓助の弟。慶應義塾高等部卒業。博文館の映画プロットのコンテストに応募し、審査員だった谷崎潤一郎の目にとまり小説家デビュー。博文館で雑誌「新青年」の編集者として横溝正史のもとで働くかたわら、推理小説、幻想小説を執筆した。30年(昭和5)2月10日、谷崎のもとに原稿催促にいった帰り、タクシーが踏切で交通事故を起こし、死亡。享年二七
渡辺啓助[ワタナベケイスケ]
1901年(明治34)、秋田県生まれ。本名圭介(けいすけ)。渡辺温の兄。九州帝国大学法文学部史学科在学中、温とともにポーの短篇を翻訳。また俳優岡田時彦のゴーストライターとして「偽眼(いれめ)のマドンナ」を発表。戦後は推理小説作家として活躍し、日本探偵作家クラブ(現・日本推理作家協会)の会長を務めるなどした。2002年(平成14)、逝去。享年一〇一(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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