出版社内容情報
夫、武田泰淳と過ごした富士山麓での十三年間を、澄明な目と無垢な心で克明にとらえ、天衣無縫の文体で映し出す。田村俊子賞受賞作。巻末に関連エッセイ、大岡昇平の「山の隣人」と、武田泰淳の「山麓のお正月」を収録する。
内容説明
夫・武田泰淳と過ごした富士山麓での十三年間を、澄明な目と無垢な心で克明にとらえ、天衣無縫の文体で映し出す。上巻は昭和三十九年七月から四十一年九月まで収録。新版にあたり全巻に泰淳の関連エッセイを付す。田村俊子賞受賞作。全三巻。
目次
昭和三十九年
昭和四十年
昭和四十一年
巻末エッセイ(山麓のお正月(武田泰淳)
山の隣人(大岡昇平))
著者等紹介
武田百合子[タケダユリコ]
1925(大正14)年、神奈川県横浜市生まれ。旧制高女卒業。51年、作家の武田泰淳と結婚。取材旅行の運転や口述筆記など、夫の仕事を助けた。77年、夫の没後に発表した『富士日記』により、田村俊子賞を、79年、『犬が星見た―ロシア旅行』で、読売文学賞を受賞。93(平成5)年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
117
夫の武田泰淳や娘の花とともに、富士山麓鳴滝村の山荘で過ごす日々が、飾らぬ言葉で綴られた日記。内容は食事の献立や買い物など、日常の瑣事の記録が中心だ。それなのに、なぜこれほど惹きつけられるのだろう。歯切れの良い文章は、彼女の天衣無縫・天真爛漫な人となりを彷彿とさせる。上巻で印象に残ったのは、夫泰淳との大げんか。運転中に激怒した百合子は「この人と死んでやるんだ。諸行無常なんだからな」と猛スピードで爆走する。その後は松茸めしを4膳食べたと記されているだけ。気が強いのになぜか憎めず魅力的な人だ。2022/05/27
kaoru
77
武田百合子さんと夫泰淳氏との山梨の山荘での記録。毎日の天候や食事、富士山近辺の自然や周囲の人々の様子などが綴られるが百合子さんの横溢する生命力に圧倒される。花々や動物、近くに住む大岡昇平夫妻との交流。時に泰淳氏と諍い、乱暴なドライバーと喧嘩し、失礼な泰淳氏の読者と電話で怒鳴り合う。昭和と言う時代の人々の逞しさが蘇る。随所に挟まれるみずみずしく鮮やかな描写。この日記は泰淳氏が体調を崩して亡くなられたことで活字になったがその病の過程の描写も胸に迫る。島尾敏雄氏、須賀敦子さんも百合子さんの文章を高く評価して→2023/05/12
♡ぷらだ♡お休み中😌🌃💤
45
武田百合子さんの著書をすべて読了済の友達のおすすめの本。本書は、夫の武田泰淳と過ごした富士山麓での生活を綴ったもの。昭和39年7月から41年9月までを収録。「羽はむしれて赤裸で、内臓まで薄く透きとおってみえる。」「目はつぶっていて嘴も開かないが、苦しそうだ」「羽が折れて、折れ口には一寸血がついてアリがたかっている」など野鳥の死を冷徹とも感じられるような突き放した視線で捉えているのには驚いた。武田百合子さんの富士日記の続きや、他の著書も読んでみたくなった。2019/11/26
mayumi
32
作家武田泰淳の妻・百合子が綴った富士山麓での日々。上巻は昭和39年から41年まで。とにかく百合子さんが強い。車を運転しながら相手の車(自衛隊)に馬鹿野郎と叫び、それを夫に窘められたら怒りまくって暴走する。夫は生きた心地しなかったろうな…。他にも、時事としてもこの日記は興味深い。特に40年の7月。28日に江戸川乱歩が亡くなり、29日に渋谷の銃砲店立てこもり事件、30日に谷崎潤一郎死去と、怒涛の3日間。日記では淡々と語られているけれど、時代の空気感が感じられた。2021/05/04
スイ
18
1ページ目でもう「うわあ…最高…」となった。 タイトル通り、富士の麓の別荘で、何を買って幾らで、誰が来て何を食べて、というまさに「日記」なのだけど、とんでもなく面白い。 作者の武田百合子自身が大層魅力的なのもあるのだけど、文章の良さもとても大きい。 文庫本裏に「天衣無縫の文体」と書いてあって、何じゃそりゃあと思ったのだけど、読んだら「確かにこれは天衣無縫の文体ですわ…」と納得した。 続きも読む。2023/08/26