出版社内容情報
癒えることのない敗戦による喪失感を綴った表題作ほか「小林秀雄と私」など一連の「私」随想と代表的な文学論を収めるオリジナル作品集。没後20年記念出版
■目次
Ⅰ
文学と私/戦後と私/場所と私/文反古と分別ざかり/批評家のノート
Ⅱ
伊東静雄『反響』/三島由紀夫の家/大江健三郎の問題/神話の克服
Ⅲ
現代と漱石と私/小林秀雄と私
〈解説〉平山周吉
内容説明
戦後の「正義」に抗い、自身の「私情」に忠実であることを表明した「戦後と私」、三島由紀夫、石原慎太郎、大江健三郎を論じた卓越した批評「神話の克服」。「私」三部作ほか、癒えることのない敗戦による喪失感と悲しみを文学へと昇華した批評・随想集。
目次
1(文学と私;戦後と私;場所と私;文反古と分別ざかり;批評家のノート)
2(伊東静雄『反響』;三島由紀夫の家;大江健三郎の問題;神話の克服)
3(現代と漱石と私;小林秀雄と私)
著者等紹介
江藤淳[エトウジュン]
1932(昭和7)年、東京生まれ。文芸評論家。慶應義塾大学文学部英文科卒業。56年刊行の『夏目漱石』で新鋭批評家として一躍脚光を浴びる。69年末から約九年にわたり毎日新聞の文芸時評を担当。主な著書に『決定版 夏目漱石』『漱石とその時代』(菊池寛賞、野間文芸賞)『小林秀雄』(新潮社文学賞)などがある。99(平成11)年7月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
9
初期論考集。「行為はひとつの危機的な受け身の行為でしかない。三島由紀夫氏を他の戦後派作家からへだてているのはこの特徴である。彼がほかの同時代者よりすぐれた作家的資質にめぐまれているのは事実であろう。しかし、それ以上に彼の作品の魅力や通俗性(!)は、その完全な受動性、その本質的なロマンティシズム、あるいは彼の「神話」との秘密結婚などの点にもとめられなければならない。ほかの多くの戦後派作家は結局現実をかたちづくろうとするものーつまりリアリストであった。しかし、三島氏は、本質的にロマンティシストである」2019/07/11
T. Tokunaga
3
70-80年代の江藤は、内容は空疎なのに、もう気圧されるほど文章が上手い。自己を糊塗するレトリックに見せかけたものが実際は真情の吐露になっていて(突然一服したり散歩したり)、私小説なるものの達成は江藤の批評ではないか、という気がする。2023/08/27
本命@ふまにたす
2
批評家、江藤淳のエッセイ集。本格的な文学作品の批評よりも、回想録的なエッセイが中心のように感じられるが、それでも収録されている文章はやはり批評家のそれであるように感じられる。2023/03/19
ホリエッティ
0
神話の克服が読めてよかったです。2023/12/22